ゆりを好きだと気づいたのは中学二年の頃だった。
一年の頃はクラスも一緒で部活も一緒で何かと普通に会話をしていた。いいクラスメイト、それだけの印象だった。
二年に上がると、及川さんが卒業したことによって新三年になったマネージャー数名がごそっと居なくなった。俺と同じ年のマネージャーも居なくなった。残ったのはゆりだけで、辞めていった元マネージャーに「及川さんいないのに、よくやるよね」なんて言われていた。
「私、及川先輩が好きと言うよりもバレーボールが好きだから、楽しいよ」
そう、堂々と笑って言い返すゆり。その後も一人でマネージャー業こなしているのも見ていたら、ゆりは失敗もするけど、弱音を吐かずにひたむきな姿勢に見惚れていた。
「影山っ、ここ間違ってるよ」
「…なにがちがう」
「教科書持ってくるからまってて」
それに、誰にでも優しい。だから、それを嫌だと感じた頃にはもうゆりに堕ちていた。これは伝えるべきなのか、伝えないべきなのか、そんな事を考える間も無く部の雰囲気が悪くなった。
その時ゆりだって、どうして部の空気が悪くなっていたのかもはっきりしていたのに拒絶をしなかった。引退してから受験一色になった時も「影山、分からないところある?」なんて声をかけていた。
「影山と関わるの辞めなよ」
俺がゆりに言いたい言葉はこれじゃないと分かっていても、出てきたのはこんな言葉で、ゆりは「そんな事言ってほしくないなぁ」と酷く傷ついた顔をしていた。
それからゆりと話せなくなった。言わなければよかったと後悔した。けど、もう遅かった。受験勉強をゆりは影山と二人でしているところを何度か見かけた。だから、高校も影山と同じ所へ行くのかと思っていたら、ゆりが青葉城西に受かった!と人づてで聞いた。嬉しかった、次は絶対に間違えない。
三月上旬、北川第一の卒業式。
「花篭がすき」
部員達に卒業を祝ってもらっている最中にゆりにだけ、聞こえるように言えば突然混乱していた。部員達は「最後に試合しましよー」なんて騒いでいたので気付いていない。
「花篭が誰かに取られるのが嫌だから今伝えた。今すぐは答えなくていいよ、だから俺の事考えてほしい」
「…わかった」
卒業してから何度か二人で出かけたり高校から送られてきた課題を一緒にやって過ごしてた時にゆりが「、すきだなぁ」とうっかり零した言葉を聞き逃さなかった。
「なにが、すきなの?」
「ーっ!わかってるくせにっ!!」
「うん、だから聞いた」
ゆりは笑って「国見って意地悪だよね」と言った時に、あの傷ついた顔をもうさせたくない、笑っていえほしいと思った。
「ゆりがすき」
そういうと顔を真っ赤にして「いきなり、名前はやめて」と言う顔が可愛くて、人がいるところでは言わないようにしょうと思った。「ゆりは?」とまた、呼ぶと潤んだ瞳で俺を見て「ッ…す、き…です」と言った。その顔は俺だけが知るゆり。
春休みの間、金田一に会うことはなく会って、報告すればいいかと思っていた。
入学式当日、たまたま金田一、俺、ゆりでクラス表を見終わって「何組だった?」と普通の会話が始まった。
「俺、六組」
「俺は、五組。花篭は?」
「金田一と一緒!」
「おぅ、じゃあまたよろしくな!」
「うん、よろしくね」
たぶん、今だと思った。この流れで「ゆりのことよろしく」って言えばいいと思ったけど、俺の口が動くよりも「国見ちゃーん、金田一!」という言葉に掻き消された。
「おい、お前デカイ声出して走るな!」
「えー、だって俺の可愛い後輩早く見てほしくって、こっちが国見ちゃんで、こっちは金田一、
んで、これは可愛い可愛いゆりちゃん」
「俺に紹介するなよ」
「嫌だな〜岩ちゃん、練習だよ!練習」
と及川さんにクビを締められても「お久しぶりッス、及川さん、岩泉さん」と返す金田一。俺は「苦しい」と零した。
「ねぇねぇ、ゆりちゃん可愛くなった?前から可愛いかったけど…」
「綺麗になったな?」
「ちょっ、岩ちゃん!何口説いてるの!」
「口説いてねぇよ!うんこ野郎と一緒にすンな」
少しだけ頬を染めて「ありがとうございます」と返すゆりと目があった。たぶん、言っていい?と合図だ。締められているので、ゆっくりと瞬きをして、いいよ、と返事した。
「あの、か「もしかしなくても、恋してるでしょ?及川さんに任せない!あ、でも、今俺に彼女いないから付き合うのはやめてね?可愛い可愛いゆりちゃんでも、彼氏ネタでイジちゃうよ?」
「お前の事情とか興味ねぇよ」
「ふん、もし、ゆりちゃんの想い人がバレー部だったらずっと俺のサーブ付き合ってもらうからね」
「この前の矢巾もそうゆう理由か?」
「そう!でも、矢巾別れたみたい」
「それ、お前のせいだろう、最低だな」
先輩達が話している会話を聞きながらまた目があった。それは先程、目があった時とは違う。
今は、付き合っていること言うのやめよう?