生粋のバレーボールファン




北川第一中学 女子バレーボール部の神崎みすず。


界隈では少々名の知れたプレーヤーが、突然女バレの世界から姿を消した。


怪我をしたわけでも、彼女を追い抜く才能が現れた訳でも無かった。監督やコーチ、チームメイトの説得も虚しく、彼女がプレーヤーとしてコートに戻って来ることはなかった。


……プレーヤーとしては。




「徹センパーイ!」

「あら、また来たのみすずチャン」




男子バレーボール部が練習する体育館のギャラリー部分から、コートに向かってぶんぶん手を振る彼女こそが神崎みすずだった。


ここ最近、見慣れた光景に呼ばれた本人も軽くひらひらと手を振り返した。




「神崎はすっかり及川のファンだな」

「こんな奴のどこがいいんだか…」

「岩ちゃんヒドイ!……でもみすずちゃんは俺のファンって言うか」




ーーーーー バレーボールのファン、だね。




神崎みすずが、プレーヤーを退いた理由。


それは、"バレーボールに魅せられたから"だった。



みすずたちのチームの試合が早く終わった日、初めて男子バレー部の試合を見た。始めはただの興味本位だったが、中学生たり得ぬプレイをする及川徹率いるそのチームを見て、みすずはゾクゾクとした何かを感じた。

自分がプレイしている時には感じられなかったその独特の興奮に味を占め、みすずはさっさと女子バレを退部して、すっかり男バレの追っかけになったという訳だ。

当初は、持ち前の才能をあまりにも簡単に手放してしまうものだから、及川たちも説得を試みたのだが頑なに拒まれたので、今はもう好きなようにさせている。

勝手知ったるみすずが、及川のせいでマネージャーがいない男バレの臨時マネージャーを務めてくれたりするので、有難いのも確かであったが。



「おいみすずパンツ見えてんぞ」

「見なきゃいーでしょ飛雄くん」

「…そういう問題か?」

「こら!そう言うのは先に俺に報告しなさい!」

「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞクズ川!!」

「ハーフパンツ履いてきなよ」

「……っ、」

「ほら金田一が鼻血出す前に」

「みみみ見てない!!!俺は見てない!!!」

「嘘つけ顔真っ赤だよ」

「…英くんはがっつり見すぎでは?あ、じゃあお手伝いするからジャージ着てくる!」



ふわり。

遠心力でスカートの裾がひらりと舞った。



「「「「(白!!!)」」」」

「白のレース!!みすずちゃんらしい!!」

「叫ぶな馬鹿!!!」

「岩ちゃん痛い!!」



とまあ、男子バレーボール部全員の視線を集めてしまうくらいには、みすずは人気で、可愛かったのも、説得を早々に辞めた理由の一つであった。



「まあでも。助かるとは言えみすずちゃんはマネージャーにしとくには惜しい存在だよねェ」

「…まぁな。だから監督もマネージャーとして入部させねぇんだろ。いつでも戻れるように。」

「そもそも俺が卒業した男バレなんて、興味無くなっちゃうかも知れないしね〜」

「調子乗んなよ」




生粋のバレーボールファン


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