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列車の揺れと、狭い座席のせいで、隣にいる煉獄杏寿郎と肩が触れ合う。

当の本人は気にもせず弁当を食べているけれど、任務だということも忘れそうになるくらい、姫竹月櫻子の心臓は脈打っていた。

いわゆる幼馴染の関係にある2人だが、鬼殺隊となるべく共に稽古をしている内に櫻子はいつの間にか杏寿郎に想いを寄せていた。特段、想いを告げる予定も無かったが、お互い柱になってからと言うもの、ゆっくり時を過ごすことが少なくなっていたため、櫻子は任務が決まった頃より上機嫌であった。


「どうした櫻子、嬉しそうな顔をして」

「…杏寿郎と一緒の任務がうれしくて」

「共に任務とは、久しぶりだな!」

「私が、初めて十二鬼月を斬った時以来かな」

「うむ!よく覚えている。櫻子が柱になった日のことだからな!」

「うん、なんかちょっと懐かしいなあ」


感傷に浸りつつ、窓の外を眺める。

どうやらこの列車には鬼が出るらしい。常に動いている中なのだから、始めから乗っているか、走行中に襲って来るかだと踏んでいるが、それにしては気配が全く感じられない。柱2人を任務に寄越すのだから、それ相応のことなのだが。

加えて今回の任務にあたる際、櫻子は鎹鴉では無く産屋敷邸に呼ばれ、お館様直々に任務の命を受けた。その時お館様は、櫻子に気になることを残したのだ。



「本当は杏寿郎と共に櫻子を行かせたくない。でも、櫻子でなければならない様な気もする」



先見の明に優れているお館様が言ったのだ。
行かせたくない、それが一体どういう意味なのか。それでも私でなければ行けない理由はなんなのか。櫻子には分からなかった。

ただずっと、嫌な予感がしていることに変わりなかった。



「俺と櫻子なら、きっと大丈夫だ!」

「杏寿郎……うん、そうだね」



不安そうな櫻子の気持ちを察したのか、杏寿郎が力強く声をかける。こうした思いやりがまた、櫻子の心を惹き付けた。

幼馴染ということもあり、戦闘に関してこの2人の息は柱の中でも随一の相性だった。共に行く任務が非常に少ないのは、人手が足りないから、ただそれだけである。



「櫻子」

「なに?」

「この任務が終わったあと、休暇をもらっているのだが」

「うん」

「櫻子の休暇も申請したから、どこかへ出かけないか」

「……えっ、」

「嫌か?」

「や、ちがう…驚いただけで…行きたい、です」

「うむ、ならば良かった!もしどこか行きたいところがあるならば、先に教えてくれ!」



こんなことは、初めてだった。

事前に許可も取らず勝手に休みを貰い、挙句これは…期待しても良いんだろうか。櫻子は不安なぞどこかへ吹き飛び、心も脳内も休暇のことしか考えられなくなっていた。




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