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「アンタもう用済みだから」


相棒の様な存在だった人間から、私のことを拒絶する、冷たい冷たい言葉が放たれる。

ああ、ここに、私の居場所はもうないんだ。
私はもう、要らないんだ。

そう思ってから、部活に行かなくなった。チームワークを重視する監督も、コーチも、もちろん部員も、誰も私のことを気にすることは無かった。

部室に飾られた表彰状が、まぶしい。
あの頃にもどりたい。もどりたい。でも、私にはもう、私にトスをあげくれる人間はいないのだ。


さようなら、私のバレーボール人生。



−−−−−そう決めたのが先月。

それなのに、私はいま、目の前で高く高く飛び上がる少年を見て、心が奮い立っていた。

私のバレーボールへの気持ちを、思わずあの彼に重ねた。私も、飛びたい、高く飛んで、またスパイクを打ちたい。私への、トスが、欲しい。欲しかった。でも私にはもう、トスをあげてくれる人はいない。だったら。

試合終了後、急いでギャラリーを降りて人だかりの中に小さなオレンジ頭を見つけて、思わず声をかけた。


「あの、」

「えっ、は、はい?…俺?」


悔しさで滲んだ瞳が、私を捉える。
感傷に浸っているところに水を差すようで少し罪悪感を覚えたけれど、意を決して聞いてみる。


「高校でも、バレーボールしますか」

「っもちろん!当たり前だ!っあ、すみません、です!」

「…どこの高校に行くか決めていますか」


試合の名残なのか、言葉尻が強くなったあと、しゅんとしてすぐ謝ってくれる姿に、さっき試合中に感じたあの心が奮い立つような姿はあまりにも重ならなかった。

でも、彼は、きっと。


「えっと、烏野に……」

「からすの、からすの……はい、ありがとうございます。突然すみませんでした。私、あなたのプレーに感動しました。」

「ええっ、あ、ありがとうございま、す…?」

「はい。それでは、また。」

「っあ、あの……!!」

「?」

「俺、日向翔陽!です!、君は…?」

「私は……」

「ねぇ、もう行くよ」

「英くん」



くいっと急に腕を引かれ、そちらを向くとむすっとした(いつもだけど)英くんが立っていた。

ごめんね、と声をかけたけど、それを無視してそのまま私を引っ張って歩いて行く。日向翔陽くんは、不思議そうな顔をしていたけど、その内ガバッと頭を下げた。なぜ。


「…なんでアイツと話してたの」

「話してみたく、なったから…」

「なんだよそれ」


なんだと聞かれても、私も衝動的だったのだから。それ以上はわからない。

でも、私は、私はもう飛べないから、高く高く飛び上がる日向翔陽くんを見て、私は私の気持ちと一緒に飛んでくれるような、そんな気がしたんだ。だから、 これからの彼のプレーを見たくなってしまった。


「わたし」

「うん?」

「私やっぱり、バレーボール、すきだ」

「…そうだね」



でもこのとき、バレーボールを嫌いになれていた方が、私にとっては幸せだったかも知れないと、今になってはそう思ったりもする。