「栞!」


 太一は急いで栞を助けようと手を伸ばしたが、不幸にも、その手は届くことはない。逆にレオモンの腕が太一に伸び、それは勢いをつけて太一の首を絞めた。


「ぐわあっ!」


 理性を失ったレオモンは、ただ力任せに太一の首を絞めるだけだ。


「太一ィ!」
「太一!」
「八神、くんっ」


 苦しげな太一の声が、大地に轟いている。栞は目の前が真っ暗になった。足掻こうともがけば、デビモンは高らかに笑う。無駄なのだと嘲る。無力なのだと蔑む。


「あがいても無駄だ、守人」


 猫なで声が、耳元で囁く。機嫌を取るようなそんな声に、栞は嫌悪感さえ覚えた。離せと腕に力を入れても、余計に強い力で身体を押さえられた。こわいなんて感情は、もうどこにもない。ただ、助けたいと。ただ、太一を助けなければと。
 咄嗟にアグモンを見ても、彼はレオモンの足元を蹴ったりするだけしか出来ない。それはイヴモンも同じ事だ。栞を離せと、ただデビモンを睨み付けている。


「あれらに進化するだけの力は残っていない。諦めろ」
「諦め、ない!」
「なんだと?」


 諦めちゃ、いけない。
 そう、諦めては、いけないんだ。


「『約束』したから、」


 太一たちは、自分を守ると言った。
 だから、自分は諦めてはいけないと約束した。


「だから、諦めないっ!」


―――…しゃらららん!!


 ぱっと一瞬のうちに光を灯した守人の身体に、デビモンは思わず舌打ちをする。
 初め守人を見たとき、彼女は気高く、そして優しかった。二回目、彼女を見たとき、やはりその気高さや優しさはぬぐえていなかった。三回目、彼女を見たとき、彼女は少しだけ悲しそうに笑っていた。そして、今、彼女を見ているが、やはりその気高さや優しさは消えてはいなかった。


「くっ!」


 思わぬ光に、デビモンは栞の身体を突き放した。眩いばかりの光、それは希望であり、それは温もりや優しさでもある。

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