「け、怪我はない…?あの、そっちの女の子、も…」


 気遣わしげな瞳が自分とその横に向けられ、太一は同じように横へと視線をずらす。「う、うん」ヒカリは体を強張らせ、じんわりと浮かんだ涙を堪えるように首を縦にふった。思わず安否を知りながらも、その体に触れ、傷一つないか確認する。…どうやら、怪我はないようだ。ほ、と息を着いたのもつかの間、ヒカリはきょろきょろと何かを探し始めた。


「お兄ちゃん、コロモンは?」


 その言葉にハッとする。先ほど、栞が助けてくれた時、視界の端で姿を確認したが――同じように探す先で、栞が白い指を真正面へと向けた。


「あそこ…!」
「え!?あっ、コロモン!!」


 まさにコロモンは、囮のようなものだった。自ら望んでその行為に及んだとはいえ、やはり幼年期では分が悪すぎる。太一は顔が真っ青になっていくのさえ否めなかった。
 2人はその跳躍力を駆使し、マンション伝いに天高く飛び上がっていく。逃げるコロモンを追いかけるオーガモン。他には目が入っていないようで、コロモンめがけて真っ直ぐ飛んでいく。コロモンは途中で身を翻し、口をぷくりと膨らませた。そして目を瞑ると、一気にアワを放出する。ぱちん、ぱちんと愛らしい音が響き、それはオーガモンの体に触れるだけで大気の中へと消えて行った。


「全然効いてないっ!」
「幼年期と完全体では体のつくりが違いすぎル!このままじゃ、コロモンガ…っ!」

(…っくそう!)


 この程度か。コロモンは苦々しく思い、再びマンションで向きを変え――そのタイミングを見て、オーガモンはそのマンションめがけ―語弊ではあるが―棍棒を振りかざし叩きつけた。脆い作りではないとはいえ、重量のある棍棒に叩きつけられたマンションの一部は粉々に砕け散った。


「コロモーン!!」


 ただ、叫ぶだけしかできない無力な自分。太一は精一杯の力で拳を握りしめた。―その中には聖なるデジヴァイスが握られていた。


「太一っ!早くここから逃げて!!」
「バカ野郎!一人で戦う!!いつも一緒にやってきたじゃんか!」
「太一ぃ…!」

「コロモ、!!危ないっ!」


 太一の言葉に隙を見せたコロモンを、見逃すほど甘くはない。オーガモンは一気に叩きつけるように、棍棒を素早く突き出した。


「コロモンッ!」
「コロモン、!」


 その時、二つの願いが重なった。

 組まれた指先からは白い願いが。
 握られた機械からは青い希望が。

 同時に放たれた。

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