太一の願い。栞の願い。そして、コロモンの願い。三つの願いがデータの上でちょうど重なりを得た時、その光が放たれた。
 三つの色が重なり合って、高原を駆け抜けて行く。そんな、不思議な感覚が、未だコロモンの中に残っている。
彼は感じた。この優しき力を得れば、己の持つべき力が進化するのだと。そしてそれは、確かに、進化へとつながった。


「…っ」


 栞からあふれ出た未知なる力は、増大すぎる故に、コロモンへと注がれた分とは別の場所へと注がれた。――これが、無意識に学習していた方法、か。思わず目を瞬かせた。
 空からは、丸い輪を描いた先から黄色の光が降り注ぎ、この世界で破壊された物々を吸収していく。


「コロモン進化――アグモン!」


 ちかりと遠い記憶が目を覚ますかのように、栞の頭の中はうずいた。
 『オレンジ色の怪獣』―お台場で。まだ、お兄ちゃんが、いて――進化したアグモンは逞しい二つの足で信号の上へと飛び降り、同じように飛び降りてくるオーガモンめがけベビーフレイムを放った。直線上にいたオーガモンはそれを避けることさえできず、お腹に一発ぶち当たった。


「あっ!オーガモンが…!」


 そのまま彼の巨体は光の中へと吸い込まれていった。まるで、始めから、何も存在しなかったかのように。


「行かなきゃ、いけないんだね…」


 イヴモンへと問いかけるように、それでも自ら決しているように栞は呟いた。無意識のうちに、もう戻れないかもしれないなんて感じていた。しかし、どのような形であったとしても、今一度大切な家族と逢うことができた。


「…一馬、」


 ゆっくりと浮いて行く栞の身体に、「栞!!」と太一はその名を呼んだ。しかし、栞の目線は違うところに向いている。


(あの場所で、きっと…)


 透明になった身体は、もはやこの世界に留まれないことを示していた。目線の先にある大きなサッカー場で、頑張る姿を想い、小さく、笑った。


「サッカー、頑張ってね…」


 私も頑張るから―栞の体はこの世界から、再び姿を消した。

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