―――…ああ、いつかまた逢えるさ。


 トコモンは素直に嬉しくなった。「良かったね、タケル!」それは、純粋さ故に出てきた言葉だった。タケルはくしゃりと顔をゆがめ、そのままヤマトの足もとへとしがみ付いた。ヤマトも、そのまま、タケルを受け止めた。みんないなくなってしまったけれど、タケルにはヤマトがついていた。だから、進化ができないトコモンにとっては心からの安心の種だった。


「それで?それで、どうして」
「…うん。歩くうちに砂漠は抜けて、小さな遊園地が見えてきたんだ――」


 新緑がまぶしく、傍らにはヒマワリに似た黄色い花畑が広がっている。環境は良さそうだし、遊園地と言われて悪いイメージはない。実際入ってみたが、特に害はなさそうだ。ここなら、タケルを置いていても安全そうだ――ヤマトはそう考えた。


―――……大丈夫、僕、待ってる!


 耐えきれなかった涙は目じりから頬を伝ってけれど、タケルはきっと顔をあげた。その小さな頭へとヤマトは手を乗せた。


―――…えらいぞ、タケル。
―――…でも、早く帰って来てね?
―――…ああ。様子を見に行くだけだから、二・三時間ってとこかな。直ぐに帰るさ。
―――…トコモンはしっかりタケルを守るんだよ。
―――…うん!


 遊園地を抜けたその先に合った大きな湖。その先にある島に似た場所の様子を見てくる、とヤマトはタケルに告げた。アヒルのボートも、ちょうどある。そんなに離れた距離じゃない。直ぐに帰ってくる――そう言って、ヤマトとガブモンはアヒルボートに乗り込み、消えて行った。
 気丈に振舞っていたタケルだったが、ヤマトの姿がだんだん見えなくなるにつれて、その顔から笑みが消えた。そんなタケルの笑みが見たくて。守れと言われたガブモンの言葉を受けて。トコモンはタケルのために食べられそうな実をたくさん探して、タケルの前へと出した。
 タケルはずっとヤマトの帰りを待っていた。


「……ッ、」


 栞は、ぎゅと目を瞑った。実際その情景を見たわけではないが、話を聞いただけで安易に想像がつく。幼い頃の己の姿と、タケルが重なった。ただひたすらに兄の言葉を信じて、待ち続けた幼き日と。無意識のうちにペンダントを手繰り寄せ、ふ、と息を吐いた。


―――…タケル!ごはんだよ!
―――…お兄ちゃん、遅いな…。


 しかしトコモンには、タケルの感情など、分かりもしなかった。ただ純粋にタケルに元気になってもらいたい。それだけだった。ぐいぐいと木の実を差しだしても、タケルの顔は真正面を向くだけだった。


―――…ご飯だよ!
―――……お腹空いてない。


 そうして夜になってもヤマトは戻ってこなかった。次の日になっても、ヤマトの姿は見えない。
 我慢していた感情が、一気に溢れだした。タケルの瞳からは、大粒の涙があふれ出た。


―――…タケル!
―――…お兄ちゃんッ、お兄ちゃんッ、様子を見に行くだけだからって…!すぐに戻るって、言ってた、のに…!!
―――…泣かないでタケル!


 いくらトコモンが慰めようとも、タケルはわんわんと泣き続けた。


―――…おやおやー?どうしたんですか?


 その時、そのデジモンは、現れた。


17/07/26 訂正
11/03/10

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