―――…ねえ、タケル。ねえ、ねえってば。


 しかし、いくら語りつづけても、タケルはまるで聞きたくないというように耳をふさいで、世界と自分を遮断してしまう。トコモンは言いあらわせない怒りが込み上げてきた。――あんなこと、タケルに言うなんて!思わず駆けだし、ピコデビモンを呼びだした。


―――…話ってなんだよ。
―――…タケルに嘘言わないでよ!
―――…嘘?何が嘘なんだよ。
―――…ヤマトがタケルのこと嫌いだって!!
―――…おや?どうしてそれが嘘なんだい?嘘だって証拠は?証拠があるなら見せてごらん?


 先ほどとは随分と違う、嫌に落ち着きはらった声のピコデビモンはゆっくりと浮いて、木の枝にとまる。やけに余裕の表情で、非の打ちどころが見つけられない。トコモンは俯いて、「そんなの、ないけど、」と小さな声で呟く。


―――…はん!要するに証拠もなくて疑ったわけだ?知ってるかい?そういうの名誉棄損というんだよ。場合によっては、裁判を起こせる。


 ピコモンは、やはり笑顔で、木の枝に宙づりになった。


―――…そうだ。法廷で争うかい?やってみるかーい?
―――…うう…っ!…ぷう!


 トコモンは、我慢の限界だった。怒りに震えながら、口を開け、泡を吐き出す。ピンク色の泡は、ゆっくりとピコデビモンへと向かい、彼の体を大きく刺激した。
 タイミング悪く、その場面だけをタケルが発見してしまった。彼は目をつりあげて、まっさかさまに落ちたピコデビモンを抱え、トコモンを睨みつける。


―――…何するんだよ!トコモン!
―――…なにって、
―――…今、乱暴したでしょ!


 タケルは、完全にピコデビモンを信用し切っていた。結果としては悲しかったけれど、ピコデビモンはわざわざヤマトのところに行ってくれたのだ。トコモンは何もしてくれないのに。だから、ピコデビモンに危害を加えたトコモンに怒りが向く。
 にやりとピコデビモンの口角が上がり、甘えるようにタケルにすり寄った。


―――…タケルゥ、トコモンを責めないでぇ。子供だから、僕とタケルが仲良くしている姿を見て、嫉妬しただけさ。そうだよねぇ、トコモン?
―――…ふん!
―――…なんだよ、その態度は!ピコデビモンに謝るんだ!
―――…やだ!謝らない!
―――…謝れ!
―――…絶対やだ!どうしても謝れって言うなら、僕出てく!!


 それは口論の末に出た言葉の文と言うやつだった。しかし興奮しているタケルも止まらない。


―――…あっそう!勝手に出てったら!?
―――…出てっていいの…?


 トコモンは、頭を鈍器で殴られたかのような痛みが突き刺す。視界が、徐々にぼやけはじめ、瞳を濡らす。ウソ、だよね?縋るように瞳を開ければ、タケルは顔を横に背けた。


―――…いいよ、別に!
―――…本当に出てくよ…?
―――…いいよ!あっ、そうだ!敵もいないんだし、これも、!


 ポケットから、タケルは二つの希望を取出した。

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