「丈さんっ!!」
「来ちゃ、だめだ、栞くん!!君が傷ついたら、みんなが、悲しむ…っ!」
「そんなの、丈さんだって、同じだよっ!丈さんっ!お願い、お願いだから、もうやめて!!」
「なら守人。お前がこっちにくるんだねぇ」
「栞くんには手を出すな!!う、ぐあああああっ!!」
「丈さん!!」
悲鳴が、頭の中で木霊する。離れた場所に居るというのに、その声が、まるで耳元で呟かれているかのように聞こえる。―痛い――苦しい――辛い。負の感情が、栞の心を覆い被さった。目の前が、赤く染まっていくのが分かる。
( いやだ…っ )
いつもこうなると、誰かしらを傷つけてしまうほど、栞の感情は黒く染まる。いつもは我慢している気持ちが、一気に溢れだして、人を傷つける言葉を簡単に言えるようになってしまうのだ。誰も傷つけたくない。誰かを傷つけることなど、したくなど微塵もない!ぎゅ、と目を瞑っても、
次々と溢れる負の感情はカバーできない。闇しか、見えない。
「…栞、」
あの一件以来、イヴモンとは話をしていなかった。栞本人も少し彼を避けていたし、特にイヴモンも声をかけたりなどしなかったからだ。そのイヴモンは、やはり栞の変化には敏感だった。バックの中から顔を出し、彼女を見上げ、労わるようにその名を呼んだ。
彼女は、視線を斜め下に逸らす。す、と栞の心に、一筋の光が差し込んだ。
「落ち着いて。決して、闇に心を染めちゃ、ダメだよ」
瞳から涙が伝う。この世界に来て、もう何度涙を流しただろう。例え、自分の体が守人に近づいていき、負の感情に左右されやすくなって眠りを知らぬ体になったとしても、悲しい時には涙を流すことができる。それだけが、唯一の救いだった。
栞は小さく頷いて、イヴモンを抱き上げた。優しい白い毛が、栞の心を覆ってくれるかのように、闇を払っていく。優しさが、心の中に溢れだした。
―――…しゃん。しゃん、しゃん。
優しさに心が反応した。暖かさに言葉が残された。栞の体は青色の光を燈し、友情をはぐくんだ。
「丈―――ッ!!」
ヤマトは叫ぶ。彼からの『友情』が身に染みて、よく分かった。先ほどの後悔が、頭の中をぐるぐる回って――彼は拳を握りしめた。
ガルルモンとイッカクモンが、デジタマモンのナイトメアシンドロームにより、体が壁に叩きつけられる。タケルは「もうだめだ」と呟いた。
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