「はあっ!!」
どん、っと腕に力を込めて、ナイトメアシンドローム――つまりはデジタマモンの中身が、彼自身へと戻っていく。大きな音を立てて爆発した中身は、強靭な防御力を誇る殻ごとデジタマモンを吹っ飛ばした。
「そっ、そんなデジタマモン様!?」
「バカな!デジタマモンが!!」
ピコデビモンの顔がゆがみ、彼はそのまま空の向こうへと羽ばたいていく。恐らくは、バックについているものの元へと報告をしに行くのだろう。イヴモンは澄んだ瞳でそれを見送り、再び栞へと視線を向ける。
少し疲れているのか、肩で息をしていた。光はいつの間にか止んでおり、少しだけ安堵した瞳をしていた。――確かに、用意もなく完全体への進化は、心の消費量が半端ではないだろう。本来ならば声をかけてあげるところなのだが、未だ今いち仲が修繕されたとは言えない。とりあえずは、静かにしているのが一番だろう。
デジタマモンは先頭不能、ピコデビモンは逃亡――残されたベジーモンは、イッカクモンとワーガルルモンに囲まれて戦意喪失。彼はすぐに丈の体を解放した。
「お兄ちゃんッ!」
タケルはすぐにヤマトに飛びつき、とびっきりの笑顔を見せた。
「丈さんが助けてくれたよ!」
目の前に居る丈は、少しだけ痛む体を押さえていた。2人の目が合う。ヤマトは、直ぐに、目を逸らしてしまった。太一が丈に近寄るのと同様に、栞はそっとヤマトの後ろから、彼に声をかけた。
「ヤマトくん、」
「…栞」
「ちゃんと、言わなきゃ」
そうして彼女は、自分の手に触れた。突然の出来事にびくりと体が揺れる。けれど、彼女の暖かい手からは、優しさが伝わってきた。顔を上げ栞を見れば、彼女は小さく微笑んでいた。「ありがとう」――ヤマトも、微笑んだ。
「丈にしては珍しく勇敢だったよな?」
「珍しくは余計だよ…」
「でも、カッコよかったよ、丈!」
「ほんとほんと」
「はははっ、」
「…丈。ありがとうな、タケルを助けてくれて、」
「えっ?あ、い、いいんだよ。僕の方こそ、助けてもらってばかりだから…」
「それと…!」
「うん?」
「…ごめんな」
「ヤマト…。はははっ!」
ヤマトの『友情』は、すべてを輝きに満たした。闇すらも、多い払うほどの光は、世界に浸透する。
安心したように、栞と太一は、お互いの顔を見合わせて笑う。「良かったね」「ほんと、世話の焼ける奴らだぜ」――その時だった。
あの時と同じ悪寒が、背中を突き刺した。けれど、こんなに順調に行っている中で、良からぬことなど起きはしないと思いたいばかりに、栞はあえてその悪寒を知らぬふりをした。
とりあえず、もうここには用が無くなったので、海まで降りてきた彼等――ヤマトと丈は、太一から今までの経緯と話を聞いた。
「ということは…この世界の歪みを何とかしないと、元の世界まで影響が及ぶってことか…」
全てが理解できる範囲であるわけではないが、納得しようと頭に詰め込んだ時、全員のデジヴァイスがピコピコと音を立てた。ヤマトが腰につけた己のデジヴァイスを、太一は手に取ったデジヴァイスを見る。デジヴァイスの画面には赤い点がぽつぽつと記されていた。
栞は一歩後ろを歩いて、彼らの様子を見守っていた。いくら隠そうと笑顔を浮かべても、先ほどから感じる悪寒は拭うことができなかった。
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