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 辺りは日が落ち始め、赤く染まり始めていた。「おーい、空ー!」「空さーん!」子供たちは口ぐちに彼女の名を呼ぶが、一向に空の姿は見当たらない。最初に諦めを見せたのは丈だった。それでなくても、昨夜は牢の中で過ごした彼等はあまり寝ていなかった。段々と見え始めた疲れに、体がついていけないのだ。


「…ねえ、そろそろこの辺にして休む場所を探さないか…?暗くなってから奥地に進むのは危険すぎるよ、」
「はぁ…あたし、疲れたぁ…」


 丈の言葉に覇気が感じられないと思った瞬間、ミミの足から力がくたりと抜けた。赤い点はデジヴァイスにくっきりと示されているというのに、もう一日かけて空を探し続けている。身体的な疲れのみではなく、精神的にも疲れが見え始めてしまった。
 ヤマトは内心でため息をついた。徐々に近づいている赤い点は空の位置を表している。もう、直ぐそこなのだ。


「でも、もうこの近くにいるはずだ」

「、…」
「どうしたの、栞さん」
「何か、聞こえる」


 無意識のうちに手繰り寄せたペンダントを握りしめ、栞は上空を見上げた。発達した聴覚に届いた不気味な羽音は、何やら不吉だった。


「空さんたちじゃない?」
「――空じゃない、」


 栞の呟きの通り、ブウウウンというけたたましい羽音が彼等に近づいてきたと思った瞬間――それは一気に子供たちの頭上を通過していった。黄色の体を持った、凶悪な蜂に似たデジモン――「フライモン、」栞は更に呟いた。


「フライモンだって!?――うわっ!!」


 一度彼らを通り過ぎたフライモンは、旋回してからこちらに戻ってきた。戻り際にお尻を向け、先端につけられた針を発射する。もし、あれが彼等に突き刺さってしまったのならばタダでは済まされないだろう。慌てた彼等はギリギリの地点で、その針を避ける。
 光子郎は木の影に隠れ、パソコンを開けた。


「この前、ゲンナイさんにもらったデジモンアナライザーで…っ!」


 キーボードを巧みに打てば、「ありました!」――フライモンの情報が、彼のパソコン上に現れた。子供たちはその画面を覗きこんで、少しでも多くの情報を得ようとした。

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