―そしてそれは訪れた。


 子供たちの目に映ったのは、一匹の黒きデジモン。
 そのデジモンは馬車を率いて、こちらへと向かってきた。


「な、なんだ!?」


 得体のしれない恐怖心が煽られ、子供たちは身を寄せ合う。デジモンが子供たちの上空を通り過ぎたところで、一つの黒と金で象られた棺が放り出された。


「―――!」


 開けてはならない。開けられてはならない。―しかし思いに反して、棺は落下しながら、その蓋を開けた。――それは、黒いマントに身を覆い、静かに降り立った。人に似た形をしているが、本能が語る。あれは、デビモンやエテモンと同等の、否、もしかしたらそれ以上のデジモンである、と。


「選ばれし子供たちよ」


 それが言葉を発した途端、圧迫感に、頭が潰されそうになった。それくらいの威圧感が、彼には存在している。地を這うような低い声は、彼らの脳内を揺さぶった。空はその姿形に見覚えがあった――あの日、紋章の話を聞いた時。ハッとしてピヨモンを抱く腕に力を込め、立ちあがる。


「コイツよ!ピコデビモンと通信してたのは!」
「こいつではない!!ヴァンデモン様だ!!」
「ヴァンデモン…!?」
「ヴァンデモン様だ!!」


 ピコデビモンは、ヴァンデモンに随分と心酔しているように見えた。


「くくく…お前達の旅もここで終わりだ―」


 言うや否や、ヴァンデモンは腕を広げた。
 「ナイトレイド!!」マントがふわりと浮き、その中から幾重もの蝙蝠が飛んでくる。その黒さは、闇を彷彿させる。闇のように黒い蝙蝠は、子供たちに襲いかかった。


「行くぞ、みんな!!ベビーフレイム!!」
「プチファイヤー!」


 真っ先に前に出たのはアグモンだった。続いてガブモンも前に出る。彼等は必殺技を駆使して蝙蝠を駆逐した。直ぐにモチモンはテントモンに進化をし、「プチサンダー!」、パタモンも「エアショット!!」参戦した。


「切りが無いですよ…!」


 デジモンたちの攻撃により、蝙蝠たちは次々に焼き払われていくが、まるでウジ虫のように後から後から湧いて来る。4匹の攻撃を避けた蝙蝠達は、丈とミミに襲いかかった。


「ミミッ!!パルモン進化ァ!――トゲモン!」


 「みんな伏せて!」そう言いながらトゲモンは蝙蝠が集まる地点へと赴き、「チクチクバンバン!」攻撃を放った。トゲは余すと来なく蝙蝠を打ち落した。「いまだ!」蝙蝠が消え去ったところで、ゴマモンはイッカクモンに進化をした。


「ハープーンバルカン!!」


 角から発射された無数のミサイルは、真っ直ぐヴァンデモンに向かって飛んで行った。しかしヴァンデモンは攻撃されているにも関わらず、相変わらずの余裕の表情で、避ける様子を微塵も見せなかった。あのままでは直撃である。――その通りになった。爆音が響き渡り、辺りに噴煙が立ち込める。


「やったぞ!」


 思いもよらず、呆気なく片がついた。丈は思わず声をあげて喜ぶが――ヴァンデモンは傷一つ負わず、噴煙の中から飛び出て来た。


「これで勝ったつもりか!?――ブラッディストリーム!!」


 彼は左手に赤い電撃で具現化した鞭を持ち、思い切り力を込めて操った。まるで生きているかのように滑らかに動いた鞭は、トゲモンの足元を引っ手繰った。「はははは!!」高らかに笑い声をあげながら、更に右手で同じ鞭を持った。それはイッカクモンを弾き飛ばして、アグモン、パタモン――とどのつまりは全員を、弾き飛ばして行った。
 まるで大道芸のパフォーマンスのように全員を地に沈めたヴァンデモンは、初めて地面へと降り立つ。鞭を仕舞った。


back next

ALICE+