ミーン。ミーン。という虫の声が、彼女の耳に届いた。ぴくりと指を動かし、ゆるゆると目を開けた。頬に突き刺さる冷たさを振り払うように、ゆっくりと起き上がる。
「ここ、は」
辺りを見回せば、一面白銀の世界。――それは、この冒険をするにあたって、全員が集まった場所と同じ光景。「ここは…」もう一度呟く。
「ん…」
「空、」
隣にいた空の瞳もゆっくりと開いていく。よくよく見てみれば、子供たちは全員無事のようだ。よかった。離れ離れにならずにすんだ。
「ここは…」
「日本、なのか?」
「この祠… あ!!キャンプ場だ!!僕たち戻れたんだ!!」
「うう…!!うわーん!!」
「ここで私たち、デジモンたちの世界に…。あ…!デジモンは!?」
空がぽつりとつぶやき、そうしてようやくその存在が側にいないことに気付いた。さっきまで確かに隣にいたはずなのに。
「夢だったなんてこと、ない、ですよね…?」
「カードが違ったからってこと…?」
「…ううん。みんな、いるよ」
俯いた空の顔は、栞の言葉に起き上がる。彼女の顔は、笑っていた。
「空あ!!」
その声に全員、笑みを浮かべて振り返る。
愛するパートナーデジモンたちは、みな一列に並び、真っ直ぐにこちらを見ていた。夢ではない。彼らは確かに存在している。ここに。この世界にも。
「みなさん、お目覚めのようね」
「全ク、全然目覚めナイんだかラー」
「お前たちどこ行ってたんだよ!」
「へへ!食べ物を探してたんだ!」
「はは!ここは日本だから、もうそんなもの食わなくてもいいんだよ!」
「もっと美味しいもの、食べられるから!」
ふと見上げれば碧い空。それは何処でも同じくまっさらに広がっていた。
「おかえり!!」
「ただいま!!」
デジモンたちの言葉に、子供達は応える。ずっとずっと、言いたかった言葉。ようやく、この世界で、言えた。
「ねえ、太一?どうして僕のカード選ばなかったの?」
「あのカード?あ…ああ、記念にとっておきたかったから…」
「ほんとかなあ?」
「そ、そんなことより、八人目を探さなきゃ」
「ああ。もうヴァンデモンも動いているだろうからな」
「光が丘だ…。きっと八人目はそこにいる。やつらより先に探しだして、助けるんだ!」
「おう!!」
青空の元、彼らの明るい声が、いっぱいにはじけ飛んだ。
17/07/27 訂正
11/07/12
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