「すみません…、乱暴なことをして…」
「そんな!ホエーモンが悪いんじゃないわ」
「…うん。黒い、歯車のせいだったんだよ」


 波に揺られながらであるし、何せ海に飲み込まれないよう必死なので、栞は自分が上手く笑えたかは分からなかった。


「きっとあれが最後の一個だったんだよ!」
「ホントに最後なのか?」
「多分ネ。ソレにシてモ、良カったネ」
「…なに、が…?うわっ」
「栞しっかりつかまってなさい!」
「ちゃ、ちゃんと掴まって、る!」


 イヴモンの意味深な笑みを知りたい気持ちがあったが、それよりも落ちる不安の方が勝り、空の叱責通りしっかりと掴まることだけに専念することにする。その光景を見て、ミミが笑っていたが。


「本当にありがとうございます、お陰でやっとすっきりしました…」


 穏やかな波と同様の口調で、ホエーモンは礼儀正しくお礼を言ったので、子供たちはなんだか気分が良くなった。


「なあホエーモン」


 元気よく声をかけた太一は、その手でしっかりと丸太を掴んでいた。


「俺たちサーバ大陸に行きたいんだけどさ」
「サーバ大陸ですか?」
「ああ。それでここからどれくらい離れてるか、知ってるか?」
「はい…私でも5日はかかります」
「かなり遠いってことか…」


 その言葉に、子供たちはいかだも壊れたことを思い出し、落胆した。ふう、とため息がもれたのは仕方のないことでもあった。


「サーバ大陸に行かれるのですね?」
「ああ、そうだよ」
「黒い歯車を取り除いてくれたお礼に、私がお送りしましょう!」
「ほ、ほんとう!?」


 この時、一番喜んだのは、誰でもなく栞であったとか。綻んだ顔を見て、ホエーモンは(本当であったかは不明だが)優しく微笑んだ。


「ありがとう、ホエーモン!」


 声を揃えて言う子供たちに、ホエーモンは「お安いご用です」と言って、子供たち一人一人を自分の上へとのせた。


「ダカら言っタでショ?良かッたネっテ」


 そう言うイヴモンも、どこか嬉しそうだったとか。


17/07/26 訂正
10/11/23 訂正

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