「よし、俺が行く!」
「や、八神くん、気をつけてね…」
「…おう!任せろ!」
「あれ、ちょっと太一照れてない?」
「う、うるさい!アグモン!」


 太一はアグモンを一喝すると、照れた頬を隠すためにすぐに渡り始めた。彼ほどの運動能力を持てば、腕の力だけで登っていくことは他愛ないことだろう。


「…栞、」
「うん、」


 下ではみんなが待っている。そして栞が祈っている。
 それだけで、太一は自分の中で勇気が湧くのを感じた。


「あと、ちょいだ…!」


 その瞬間、辺り全体がパァと光り輝いた。それは、栞の祈りが、太一のデジヴァイスに届けられ、その願いが叶ったためである。
 またひとつの黒い歯車が灰となり、世界へと消え去った。


「よかった…って、うわぁああ!!」


 黒い歯車によって支えをもらっていた太一の身体が、放り投げ出された。下は胃液である。誰でもいいから受け止めなければとみんなが手を広げて太一を待った。しかし彼の重みが彼らにのしかかることはなく、太一は一人で見事に着地してみせた。暫しの間、太一は軽く無視されることになったというのは後日談であるから、とりあえず子供たちからの喝采を浴びた。


「やったぞ!」
「すごいわ…って、え…?」


 太一が着地した瞬間だった。急にあたりが眩く光り出したかと思うと、不思議な力が彼らを包み込んだ。なんといかだが浮いたのだ!子供たちが驚く間もなく、いかだは丸い穴へと一直線に向かっていく。必死にいかだやら木箱やらに掴まって、次の衝撃を待ちわびた。
 それはどれほど大きい音だったのだろうか。おそらく、大きなクジラがショーの最中で、飛び上がった時のような大きな音だろう。彼らはホエーモンの中を抜け出し、海上に漂っていた。案の定、一所懸命作ったいかだはボロボロに壊れ、彼らはそれぞれの木にしがみついていた。泳ぐことが出来ない栞にとって、今の状況は恐怖そのものだった。空が片手で支えてくれているのをいいことに、彼女は木の枝にからだごと掴まっていた。その頭の上に乗るイヴモンは濡れることすら嫌がっている。


「み、みんな大丈夫か!?」
「あ、ああ…」
「ポヨモンも僕も大丈夫だよ!」


 全員の安否を確認し終わった後、ホエーモンが申し訳なさそうな顔をしながら大きな口を開けた。

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