「音…?」
「しっ、静かにしてください」


 そう言って光子郎が耳を澄ませ、眉を寄せた。そう、確かにドドドドッという変な音が聞こえているではないか。光子郎が素早く後ろを振り返り、目を見開いた。


「み、みなさん!う、うしろ!」
「え?なんだよ、こうしろ、…って、ええええ!?」


 音の原因は、先ほどまで彼らが乗っていた船にあった。船から降りてだいぶ歩いたのに、どうしてこんなに近くに船が。 え、動いている?子供たちは、コカトリモンのしわざだとすぐに気付いた。しかし倒すにも体力がないし、何より船に押しつぶされてしまう。


「に、逃げるぞ!!」


 太一の声に、子供たちはいそいで走った。確かに逃げなきゃ、死んでしまう!ぞっとした思いを隠すように、子供たちはがむしゃらに走った。船からコカトリモンの高笑いが聞こえる気がした。


「よみがえったのか!?」
「そんなばかな…!!」

「ちょ、ちょっと前見て、前!!」
「え…?」


 真っ先に逃げ出したミミの目に飛び込んできたものは、巨大なサボテンだった。しかし先ほどの一件があるので、蜃気楼だと疑ったが、そのサボテンに影があることから本物だと判明した。子供たちは急いでサボテンの背後に回り込んだ。船は回避することができず、真正面からサボテンにぶつかった。サボテンは柔らかい体を持っているのか、ぶつかった反動でぐにゃりと曲がったが、曲がった勢いのまま船を遠くへと飛ばしてくれた。壊れていく船から、黒こげになったコカトリモンの姿が舵を持ったまま空へと消えていった。その際、何か言っていたが、聞こえはしなかった。


「…?」


 栞はサボテンを見上げて、心の中が暖かい光に包まれるのを感じた。首をかしげながら、サボテンに触れようと手を伸ばす。

back next

ALICE+