「太一ッ!」
「アグモンは俺が守る…!」


 そんな友情劇をあざ笑うが如く、クワガーモンは再びシザーアームズを繰り出そうとした。空やミミの高い叫び声が砂漠一面に響き渡った。何もできず、栞はただ目を瞑ることしか、できなかった。やっぱり、無力なんだと改めて気づかされる。


「ピットボム!」


 かわいらしい高い声が聞こえ、小さな爆発音が鳴った。子供たちは唖然として、あたりを見回す。襲いかかってきていたはずの衝撃がなく、太一とアグモンもきょろきょろとあたりを見た。


「ピッピッピ…」


 それは、太一とアグモンの目の前にいた。
 駆けよってきた子供たちも初めてその姿を目に入れ、驚いたように目を見開く。タケルがぽつりと変な奴と呟いたのが聞こえたのか、その変な奴は振り返って目をきっと釣り上げた。


「ピッ!この未熟者!」


 愛らしい容姿のわりに、厳しい口調。
 栞は、彼が誰だか無意識に分かっていた。


「ピッコロ、モン…?」
「久しぶりッピ、守人」


 ピッコロモン、と呼ばれたピンク色のデジモンは、栞を見ると幾分か表情を和らげた。知っているはずもないのに、知っている変な感覚に、栞は戸惑った。
 ミミが可愛い、とピッコロモンを抱き上げると、その手の中で彼は自慢げに笑った。イヴモンがため息をつきながらピッコロモンを見る目が、ほとんど呆れているようだった。


「クワガーモンヲやっツけたのハ、君だネ」
「私の魔法の威力、見たかっ!ピッ!」


 誇らしげに胸を張った後、子供たちの顔を順々に見つめ、鼻で笑った。

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