(…いやだな)


 それは少し前――アグモンが、スカルグレイモンに進化した時から、度々起こっていた現象だった。身体自体に害はないから、特に気にはしていないが、仲間に迷惑をかけることだけはしたくなかった。しかし幸いなことに、誰ひとりとして彼女の変化に気づいていなかった。首を横に振って、光子郎がアンドロモンの街で見たプログラムとゲンナイからもらった地図を組み合わせているプログラムを見つめた。


「広い世界だな…。地球と同じくらいか…?」


 ヤマトがぽつりとつぶやいた。同じ、くらい?―――違和感はすぐに舞い込んできた。


「ちがう」


 ぽっかりと浮いた球体は、おそらくは己らが足を踏んでいたものと同等。栞の口からは案外簡単に言葉は漏れた。


「くらいじゃないよ。…同じだ」
「え!?」
「ええ。栞さんの言うとおりです。さっきのメールアドレス…つまりメールの出したコンピュータの場所は…」


 彼はひと際強くキーを叩いた。


「あそこです」


 球体に赤い印がついた。よくよく見ればその赤い印はついている場所は、世界地図に載っている場所に似ている。


「そこは僕がよく見に行っていた…インターネットのホームページのある場所です」
「つまりメールは私たちの世界から来たっていうこと?」
「それだけじゃありません」


 光子郎は球体を見つめたまま呟いて、その隣に、違う球体を並ばせた。そちらは世界地図が載っているというわけではないが、無数に絡まった糸のようなものが幾重にも走っていた。


「あれが僕たちの地球。そしてそのネットワーク。この世界のものと重ねると…」


 それは、驚くほどぴったり重なった。まるでもとは同じものであって、何らかの理由で離れてしまったとでもいうようだった。


「ネットワークの形がまったく同じ…」
「つまりどういうこと?」


 ずきん、と頭が痛み、栞は少しだけ俯いた。光子郎の説明を聞きたいのに、ずきんずきんと痛む音がやけに大きい声へと変わっていった。(やめて)心の声が、栞の頭の中に響き渡る。そのようなことを思ってもいないのに、(紐を解かないで)彼女の奥底から叫んでいた。気づかれないように自然な態度で一歩後ろへとさがって、頭を支えるように手で押さえた。イヴモンがただ心配そうに彼女を見つめていた。

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