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「いいかい?空くんを助けるのが第一だ!くれぐれも無理な戦闘はするんじゃないぞ!」


 ピラミッドの回りを囲うように見張るデジモンたちを厳しい表情で見つめながら、丈は空救出組に言い聞かせるように念を押した。分かっているとは思うけど、と再び続けられそうになるのを光子郎が「丈さん達こそ無理は避けてください」という厳しい表情の前に消えていった。


「エテモンが出てきたらみんな逃げて構いません!」
「みんな、無事にここに帰ってきましょうね!」


 最後にミミが親指を立て、笑顔で言った。不安も胸の内から渦を巻くようにあふれ出ていた。しかし、それでも大切な仲間を助けるためには、もはやそのようなことは言ってられない。子供たちは一様に拳を握り、逞しい笑みを浮かべた。
 丈とゴマモン、ヤマトとガブモンがそれぞれの位置にスタンバイしている間に、残りの子供たちは隠れ身術のというように砂漠の色と似ている布をかぶり外の様子を窺った。


「ハープーンバルカン!!」


 イッカクモンの攻撃がピラミッドで爆発を起こし、奇襲と名づけた囮作戦が始まった。二回目のハープーンバルカンが決まった時にはピラミッドは激しく揺れ、見張りをしていたデジモンたちがイッカクモンの姿に気づいた。幾重ものミサイルに驚きを隠せない様子だったが、敵と判断したのか、一直線にイッカクモンめがけ駆けてきた。また突然のことに慌ててピラミッド内から出てくるデジモンたちの隙をついて、作戦通り後退する。逃げまどうデジモンたちの背後から、今度はガルルモンのフォックスファイヤーに焼かれた。


「…うまく逃げてくれよ」


 彼らのことは心底心配ではあるが、今の己にはやらなければならないことがある。ヤマトたちの姿を一回見て、太一は勢いよく立ちあがった。アグモンもそれに倣えば、彼はピラミッドを見据えた。


「行くぞ、光子郎!」
「はい!太一さん!」


 栞は顔をあげる。私も――、そう言いかけて、言葉を飲み込む。自分が付いて行ったとしても、足手まといにしかならない。走りゆく彼らの背中を、見つめるしかできなかった。
 おとり作戦は未だ続き、しかし敵の数は勢いを増すばかりだった。彼等目掛け、エテモンが乗っているであろうトレーラーも段々と近づいてきている。居てもたってもいられなくなったのはミミだった。


「やっぱり丈先輩たちが心配だわ…!行きましょう、パルモン!」


 ゆっくりと布をまくりあげ、ミミは布から抜け出す直前に2人を振り返る。


「栞さんとタケルくんはここでジッとしててね!」


 やはり、彼女もそう言って駆けていった。
 何故、何もできないのだろう。空を助けたいと願う。みんなを傷つけて欲しくないと祈る。しかし、願いや祈りなどの方法では、誰も守ることなどできない。もっと物理的な強さが、必要である。しかしその強さを必要とすれば、自分が闇に呑まれてしまうことを、何となく気づいている。

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