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 突如、見張りのデジモンたちがピラミッドの中に吸い込まれていったと思った。急にピラミッドから黒い光が漏れて、大きな音を立てて崩れて行った。


「何が起こっているんだ!?」
「こっちが逃げるには好都合ですよ!!」


 栞は空の背中にしがみつきながら、彼女の背中に小さく顔をうずめた。自分の身体が光りつづけていることが怖くて仕方なかった。子供たちは特に何も言わないが、気味が悪いことには違いない。
 もはや敵すらもピラミッドから逃げ出すような空間の中で、栞は小さな声を聞いた。「ありがとう」と耳元に掠めたのは、おそらく間違えようのない機械のような声だった。目を瞬かせ、ピラミッドを振り返れば―――黒い塊が、浮いているのが見えた。


「あれ!」


 思わず声をあげれば、デジモンごと後ろを振り返る。やはり栞の見間違えではなかった。崩れ落ちたピラミッドの下から現れていたのは、ダークホールを思い出させるような黒い塊。闇の、力。ずきん、と頭痛がひどく彼女に襲いかかる。目をつむれば、そっと回されたミミの手が、小さく栞を包み込んだ。


「ウーキキキキ!!」


 奇妙な笑い声と共に現れたのは、オレンジ色の巨体だった。
 顔は憎々しげにゆがめられ、暗黒ネットワークに埋められた身体が奇妙な色をしていた。このデジタルワールドを征服するまでは死に切れるわけがない。守人を手にするまで、死ぬわけにはいかない。執念が残ったエテモンの身体は、闇の力を得て増幅した身体を子供たちの前に晒した。


「ア…アチキが…こんなことでやられると思っているの!?」


 デジモンたちから降りた子供たちは、エテモンの姿に目を見開いた。いくらこちらが7体いたとしても、疲れきっているデジモンたちがエテモンに叶うだろうか。栞はイヴモンの身体を抱きしめながら、未だ絶えぬ光の中心にいた。


「ナノモンは勝手にくたばったわ…次はあなたたちの番よ!!」


 バードラモンのメテオウイングと、カブテリモンのメガプラスターがエテモンに当たったのだが、彼は諸共せず、肩コリにはちょうどいい、と余裕に言い放った。


「ふふ…これが代金よ!!ダークスピリッツ!!」


 衝撃波とも言える黒い弾は、デジモンたちの横を通り抜け、彼らが拠点としていたスフィンクスを消し去った。栞は己の心臓がぐにゃりと歪んだ気がして、胸を抑え座りこむ。ぐるぐると渦巻く何かが、彼女を包み込んでいた。


「栞!!」
「このままじゃこの世界が…栞が…!!」
「でも…僕たちがかなうはずないじゃないか!」


 荒い息を洩らしながら、冷や汗を流し、涙を浮かべる。イヴモンが寄りそうように、彼女の手を包み込むのを見て、太一はぐっと紋章を握りしめた。

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