「しかし我々には別の加護がある。蓄積された力の前には、手も足も出ないことでしょう」
「っ!!…お、まえら、まさか…ッ!!」
「ではこの辺で私たちダークマスターズのメンバーを紹介しましょう」
何かを感じ取ったイヴモンの言葉を遮り、恭しくも一礼してみせ、ピエモンは手を掲げた。
「メタルシードラモン!!」
ピエモンの足元の地面が砕け散り、水しぶきとともに強大な姿のドラゴンが舞い上がる。
「ムゲンドラモン!!」
ピエモンの左手側の柱が崩れ落ち、破壊の限りを尽くす殺戮マシーンが現れる。
「ピノッキモン!!」
「僕としてはもう少し楽しみたかったんだけど…ねっ!」
ピエモンの頭上から、木製のピノキオがひょっこりと顔を覗かす。
「――そして私、ピエモン。楽しい時間というのは瞬く間に過ぎていくものです」
子どもたちの前に、ダークマスターズが勢ぞろいした。全く属性の違う究極体四体が、どこか楽しげに、どこか無をまとって、それぞれの表情でそこに立っていた。
「さぁて、誰から終わりにしましょうか」
一体一体であっても、その威圧感というものを感じていたというのに、四体揃うとさすがに膝も笑ってしまうようだ。言動一つ一つに心臓が大きく脈を打ち、恐怖を伝える。油断すれば、その隙に、全てが終わってしまう―そんなイメージが彼らから伝わってくる。
品定めするようなねっとりとした視線で子供たちを見比べ、最終地点、栞にたどり着く。震える体で、それでも自分を睨み据える赤い瞳に、ピエモンは深い笑みを浮かべた。
「安心してください、守人。あなたの役目は、選ばれし子供たちの最後をすべて見届けてから終えることができます」
「終わり、に、なんて…なら、ない…!」
「おやおや、随分と威厳のないお姿になられたものですね。以前のあなたでしたら、私どもなど手も足も出ないほどでしたのに」
「……ッ」
「それもこれも、あの忌まわしい男のせいですが」
ふ、とピエモンをまとう空気が凍り、殺気だつ。思い出すことすら忌々しいと表情がゆがんだ。その恐怖に耐えきれなくなったのか、ミミの目に大粒の涙が浮かぶ。
「いや…いやよ…!!あたし、普通の小学生だったのよ…!?何でこんなところで死ななきゃならないのよ!?」
「ミミちゃん、落ち着いてっ」
「もっとオシャレして、もっとおいしいもの食べて、海外旅行とかもして…それから…」
サマーキャンプにこなければデジタルワールドにはくることもなかった。当たり前の日常を、当たり前に送っていたはずだ。人生何が起こるかは分からないとはいえ、このようなわけもわかない場所で死ぬことはまずなかったはずだ。パルモンに出会えたことは嬉しいことだが、それ以上に死ぬ恐怖にミミはすっかり怯えきってしまっていた。
わんわんと泣きわめく少女に、ピエモンは煩わしそうに深いため息をついて、そして。
「少々耳障りですね…。ではあなたからにしましょうか?」
彼女に、狙いを定めた。
ピエモンは先ほどと同じように、手から一本の短剣を生み出し、まっすぐ、彼女へと投擲したのだ。
「――ミミちゃん!!!」
栞の声が響く。
―ミミを助けなきゃ。タネモンは体に鞭を打ち、なんとか進化しようと必死にデータをかき集めるが―何かに邪魔をされてそれができない。栞の声はそこにある、自分を進化へと導く彼女の願いも、ミミの純真も感じられるのに!何かがタネモンの邪魔をするのだ。
ああ、こうしている間に、ミミが、ミミ――!!
「っ、ゥアアッ!!」
一歩踏み出した。精一杯、手を伸ばした。
何にも届くことのない、手。落ちていく、小さな体。目の前が、真っ暗になった。
15/09/11
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