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「…、あ、ありがとう、」
きっと、この顔が赤くなっているのに真田は気付いてはいない。俺は神様なんて信じてないけど、この時だけ、ありがとう、と思った。
ふと真田は立ち止まった。駅についてしまったのだ。俺はここから電車に乗って、家に帰るから、真田とはここで別れることになる。
「笠井くん、電車だよね」
「あ、うん」
「バイバイ、またね」
手を振って、俺に背を向けた真田が、どこか遠くに行ってしまう気がしてならなかった。
変なビジョンが見えた。誰かに、俺じゃない誰かに、微笑みを向ける真田の姿が。
「――っ真田!」
だから、思わず真田を呼び止めてしまった。真田は驚いた顔をして俺を振り返る。
「あ、」
なんて云おう?───どこにも行くな?
そんなの真田の勝手で、俺が規制することではない。
「どうしたの、笠井くん」
不思議そうに俺を見上げる真田に、小さく笑みを浮かべて、首を横に振った。なんでもない、と察したのか。それとも、俺は何も言えないと察したのか。真田はもう一度「またね、」と馬鹿丁寧に挨拶してから帰って行った。
「真田、」
名前を呼ぶ。―胸が、詰まる。ぐっと胸のあたりが痛くなるようで、俺は胸を押さえた。
なんでだろう、俺の知らない真田が、そう遠くない未来に見えた気がした。
10/05/30 訂正
08/01/11