つぎはぎラプソディ
真田栞の印象?―うーん。あ、そうだな、春って、思ったんだよな、たしか。あ、これ、内緒だぜ。だってなんか恥ずかしいだろ。
そりゃあデジタルワールドにくるまで話したこともなかったし、栞ってさ、クラスにいてもどちらかといえば印象に残りにくいやつだろ?他のやつともあんまり喋んないし。最近になって空が一緒にいるなぁと思ったくらいで。だから、たまたまだったんだ。たまたま、誘われて見に行ったサッカーの試合に、たまたま、別のクラスのやつが出てて、たまたま、そいつと栞が知り合いかなんかで、たまたま、栞がその試合を見に来ていて。 学校では見たこともないような笑顔で見ていて。それが、春だって思ったんだ。こんな顔で笑うやつなんだ、もっと笑えばいいのにって。
でも、デジタルワールドにきて、仲間になれても、あの時みたいな笑顔とは程遠かった。いつも泣きそうな顔してて、教室にいるときと変わらない。なんでだろう。なんでいつも寂しそうな、辛そうな顔してんだろう。
「俺たちが、お前を守るから」
決定的に変わったのは、シードラモンの湖で2人で話したときから。たくさんの話を聞いた。栞という存在が、なんとなくだけど分かった気がした。それから名前で呼ぶようになって、近づけた気がしたんだ。―表面上のことしか知ってなかったって、そのあと気づいた。
「だから栞は諦めないでくれ」
ヤマトと言い争いになって、更に丈まで加わって、泣かれたあのとき。すっごく胸が痛くなった。まるでヒカリを泣かせたような気分になったからかもしれない。
アグモンや、他のデジモンたちは皆栞のことを守人だといい、悪いやつらはみんな栞のことを狙っていた。守人だから、闇だからってさ。
―俺には難しいことは分かんねえけど。
「なんで」
「あなたがあんな軽はずみな行動しなければ空は!!なんであんなことしたの、なんで空がここにいないの、なんで空ではなくてはならない、なんで…どうして、答えられるでしょ、ねえ、答えてよ。ねえ、…ねえ!!」
初めて責められたとき。
「…私、ここにいるから。傍に、いる」
初めて気持ちをぶつけられた時。
「…そうだとしても…諦めたく、ないです」
――諦めるな――
「私は――諦めない」
真っ直ぐ、ただ、真っ直ぐ。
その言葉を、告げた時。
「八神くんを、信じてる」
「八神くんの勇気が、世界を救うよ」
「私は、あなたを信じてる」
どんな時だって、栞は栞でしかなかったようにおもえる。
からかえば恥ずかしそうに俯いて、かと思えばふとした瞬間にはほんとに同い年か疑うほど凛とする。けど、どれも、どの表情をしても栞なんだって気づいたんだ。
「八神くんに教えられたの。私は諦めちゃだめなんだって――!!」
俺が見たあの笑顔も、いつも見せてた寂しそうな横顔も。ぜんぶ、真田栞自身なんだって。今ならはっきりとそう言える。
だから、今の印象は、そうだな。
―目が離せないやつ、かな。
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