「返す返すも僕の敗因は人手不足だったと、そう思うよ」
「クク。今更負け惜しみかぁ?ゼノ先生」
一番星が出て、夕暮れから宵闇へと空の色が変わり終えた頃、ドクター・ゼノがくつくつと笑い、弟子の千空も不敵で小生意気な笑みを返した。
とうに覇権を巡る争いを終え、共にタイムマシン作りに明け暮れている二人にとってその話題は既に思い出話のようなもので、ドクター・ゼノは穏やかに微笑んだ。
「事実さ。僕の最強のプリンスがいたら、君たち少年科学王国に勝ち目はなかったよ。彼女は少年少女には少し⋯⋯刺激が過ぎるだろうからね」
「アン?彼女?」
プリンスって言ってたじゃねーか、と耳を掻きながら言う弟子に目を細める。
女なんか興味がないというスタンスを全く崩さない千空も、彼女を目にし、言葉を交わしたら僕の言った意味をたちまちに理解するだろう。
「そうなる前に、迷子のプリンスは最強のナイトに確保して貰おう」
スタンに秘密裏に探して貰っているのに、未だ見つからないナマエ。
石化から解けた彼女の瞳に一番に映り、声を聞く栄誉を授かるのは僕であればいい。そう願いながら、あの夜の彼女の声と繋いだ手の柔らかな感触を、脳内でひっそりと思い描いた。