-名字side

私は野球部主将の御幸一也が好きだ。
普段の胡散臭い笑みからは想像できないような試合中の真剣な目。
所謂一目惚れだった。

野球部のマネージャーなので接点はあるもののからかい甲斐のある後輩としか見られていない日々。
今日は朝練の後、急になぞなぞを出されて 間違うとデコピンされた。

恋愛対象として見てもらえなくても構ってもらえるのが嬉しいから悔しい。


昼休み、一足早くお弁当を食べ終わった私は
飲み物でも買おうかと財布を片手に自販機へ向かった。
やはりここは大好きないちごオレにしようか、それとも今日はフルーツオレにしようか
なんてことを考えながら角を曲がると
自販機の前でなんとも言えない顔をした御幸先輩を発見した。

少し悩んだ顔をして自販機とにらめっこしている。
最終的に諦めたようにボタンを押すとそれを取り出しこちらを向いた。

手を後ろに隠しこちらへ歩いてくる御幸先輩


私に気付くと「お、良いところに」と呟きニヤニヤした笑みを浮かべながら歩いてきた。

「名字、手出してみろ」そう言う間も
先輩のニヤニヤは止まらない

「なんですか急に… もしかして虫ですか!?そういうの本当に無理ですよ!?」

「いいから早く手出せって」

いつもからかわれているから悪い予感しかしない。
それはそれでなんだか悲しい気もする。


恐る恐る手を出すと
ポン と手の上に乗せられたのはいちごオレだった。

「買い間違えたからやる」

そう言った御幸先輩の顔は胡散臭い笑顔ではなく
少し照れたような顔だった。

期待させるような表情はやめてほしい。
それでも御幸先輩といちごオレ というアンバランスな組み合わせがなんだか可愛くて、
買い間違えたのだとしても私にくれたということが嬉しくて。

「もしかして毒とか入ってないですよね?」
思わず可愛くないことを言ってしまう口が憎い。


「お前なぁ」と軽く私の頭を叩くと
照れ隠しだと分かっているのかそれ以上は何も言わず御幸先輩は校舎へと戻っていった。


去っていく御幸先輩の手にはアク○リアスが握られていた。



いつか落としてみせます。

( → 御幸side)

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