無防備な心臓に被弾
前回の短編の未来のおはなし
部活に行くと御幸先輩の姿が見あたらなかった。
藤原先輩に尋ねると どうやら教室に残って何かの書類を書かされているらしい。
珍しいこともあるもんだなぁとボールの籠を持ち上げた。
「そうだ名前ちゃん、御幸くん呼んで来てくれない?片岡監督が呼んでたんだけど御幸くんの携帯にかけても繋がらないのよ」
マネとして部活が始まるまでに準備することはまだまだたくさん山積みだ
しかし2.3年生の先輩方より1年の私が行くほうが適任だろう。
…いや、そうじゃない。たぶん、きっと、藤原先輩は私と御幸先輩が付き合っていることに気が付いていた上で私に頼んでくれている。
他の部員に堂々と公言してはいないけれど 藤原先輩はさりげなく御幸先輩との接点を作ってくれるのだ。
「わかりました!…藤原先輩ありがとうございます!」と言うと
なんのこと?と藤原先輩は綺麗に笑って
早く呼んで来てあげて とボールの籠をサラリと私から奪った。
吹奏楽の音が聞こえる中 リノリウムの床を小走りで歩く。
ガラリと御幸先輩のクラスの扉を開けると窓際の席で頬杖をついている御幸先輩を見つけた。
「あ、見つけた 御幸先輩。」
「なんだ、名字か」と言った先輩に藤原先輩からの伝言を告げる。
御幸先輩がいる席の斜め前、お借りしますと心の中で呟いて腰掛ける。
じーっと先輩の横顔を眺めているとふとプリントの横に缶があることに気が付いた。
「何飲んでるんですか?ってコーヒー!?
しかも無糖って!そんな苦いのよく飲めますね!」
思わずうげぇっと顔を歪める。
甘党の私にはコーヒーのおいしさがまったくわからない。いちごオレ一択だ。
「お子ちゃまな名字には無理だろうな」
ニシシと笑いながら缶コーヒーに口をつける。
「な!そんなの人間の飲み物じゃないですよ!」
「おま、コーヒー好きのみなさんに謝れ!」
そう言うとまた缶コーヒーに口をつけ ちょっと来いと手招きをした。
なんですか と一歩踏み出すとグイと左腕を引っ張られ体勢を崩す。
「もう、危ないじゃ と言いかけた時ニヤリと笑う御幸先輩の顔が目の前にあるかと思えば
そのままキスをされた。
今日はキスの日らしいですね。