1.無口な君
「初めまして、新宮晴季です」
初めて会った時のこと、あなたは少しも目を合わせてはくれませんでした。
少しだけ目を赤くして、ただ遠くを見つめていました。
「葉弥に紹介したい奴が居るんだ」
放課後、同じクラスの川端一が連れて来たのは隣のクラスの新宮晴季君という無口な男の子。
「俺の幼なじみで数学が得意なんだよ、お前数学今のとこわからないって言ってたろ?」
「言ったけどそんな…申し訳ないし」
「って言ってももう連れて来ちゃったし!」
一はてへぺろとでも言わんばかりの勢いで言う。
「もぉ!新宮君もごめんなさい」
「いや、俺は別に…」
新宮君は「気にしないで」と言ったけど、少し面倒臭そうにしていたものだからさらに申し訳なさが増す。
どうしよう?と一に助けを求めて見たけれど、
「気にすんなって、こいつこういう奴だし」
適当に返すだけだし、そのあとはすぐに「俺部活あるから!じゃーな!」と言ってグラウンドへ走って行ってしまった。
私はこのあとどうしたらいいのだろうか。ちらりと新宮くんの顔を見てみると、困った顔をしていた。そうだよね…
「あの、」
「あの、」
私は大丈夫だから帰って。そう言おうとして口を開いたら、被ってしまった。二人で顔を見合わせて、吹き出す。
「あの、小早川さんがよければ今から図書室で勉強しませんか?」
「え、いいんですか…?」
「まぁ、別に、このあとやることもないし」
面倒臭そうにしていたり、困った顔をしていたから、嫌なのかと思っていたら、そうじゃなかったようだ。ちょっと安心。
とりあえず荷物を持って図書室へ移動する。移動する間も新宮君は特に何かを話すわけでもなく、ぼーっと窓の外を眺めながら歩いていた。
「あ、カラス」
真似して窓の外を眺めていると、近くの木にカラスが二羽止まっているのが見えた。
「カラスって本当は頭良くて人懐っこいんだって。動画でたまに見るんだけどすっごく可愛いんだよ」
「へぇ」
「ゴミを荒らしたりするのはちょっと困るけど、でもそれができるのも頭が良いからなんだよね…ってごめんね、興味なかったよね」
一人でぺらぺらと喋ってしまった…せっかく静かに外眺めてたのに…
「いや、知らなかったし、面白い」
「そっか、よかった」
新宮君は笑いながらそう言ってくれた。
でもそれからまた会話は無くなって、図書室についてからも会話はほんの少ししかなかった。でも勉強の教え方はすごくわかりやすくて、お願いして良かったと思った。
「今日はありがとう。すごくわかりやすかったよ」
「俺も。人に教えると自分の復習にもなるし」
「あの、またわからないところあったら聞いても良いかな」
「まぁ、良いけど」
連絡先を交換して、駅まで送ってもらった。駅までの道でも会話はなかったけど、息苦しさはなかった。
新宮君は自転車だったけど私の歩幅に合わせてゆっくり自転車を押しながら歩いてくれた。
家についてから改めてお礼を言おうとメッセージを送ろうと思ったけど、何回も打っては消しての繰り返しでなかなか送信ボタンが押せなかった。変じゃないかなとか、返事返ってくるかなとか色々考えてしまって、なんだか恋してる女の子みたいだなって思った。
幼なじみのはいりにどうしようと電話をかけると、
「それ恋してるじゃん」
「いやいやまさかそんな……え?」