一部屋目

目が覚めると、そこは薄暗い部屋だった。

眠る前の記憶が何故かぼんやりとしていて思い出せない。脳内で再生する映像は靄がかかったように曖昧で、それでも必死に巡らそうとすると頭が酷く痛んでくる。
こめかみを押さえながら辺りを見回してみても、明かりの灯っていない部屋の中はまさに一寸先は闇の状態だ。

とりあえずは現状を把握しよう。
ゆっくりと体を起こして手探りで辺りを確認すると、指先に何かが当たった。恐る恐る手にとってよく目を凝らして見ると、それはどうやら手持ち提灯のようだ。すぐ傍にはご丁寧にマッチもある。
明かりをつけてみろ、という誰かしらの意図を感じなくもないが、訳が分からないままここで立ち往生するのは御免なので慎重に提灯に火を灯す。すると暖かい明かりがぼんやりと辺りを照らし、周辺の様子が見えてきた。

ここは提灯とマッチ以外何もない、狭い和室だった。
畳はまだ新しいようで、鮮やかな緑色に混じって鮮明な赤が見える。赤。紅。朱。これは───血痕、だろうか。
触れるまでもなく、それは真新しいものだと分かる。本当に血痕であれば時間の経過とともに酸素に触れて褐色化しているはずだ。自分の体に痛みはなく、怪我もない。ということは、誰の血なのだろう。
血痕らしきものを確認してから改めて辺りを見回すと、目の前と背後は壁になっていて、左右には襖があった。どちらかが廊下への出口、そしてもう片方が他の部屋への入り口だろうか。無闇に歩き回るのは危険かも知れない。しかしとにかくこの部屋から出なくては、という危機感を感じる。理屈ではなく本能で。

目には見えない何かに気付かれてはならない。そう感じて、なるべく音を立てないように静かに歩みを進める。
向かう先は───

1.右手にある襖の奥

2.左手にある襖の奥

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