9-22
「あの、ありがとう。嬉しいんだけど、でも本当に……応えられないから。」
「別におまえがこっち向いてくれるって見返りが欲しくて言った訳じゃねぇよ。」
申し訳なさそうに眉を下げていたウイが、言われてる意味が理解できないのか視線を変な方向にさ迷せながら首を傾げた。
「別にあいつを好きなままのおまえで良い。変わらねぇ気持ちがあるってことを、おまえに見せてやる!」
「もう、何がなんだか……。」
気を遣わせたい訳じゃねぇ。
気まずくなりたい訳でもねぇ。
そんな思いを込めて、めいいっぱい笑ってやった。
「人って死んだ後、星になるって言うだろ。」
「どうしたエース。今日は随分ロマンチストなんだね。」
こんな皮肉を言えるようになったくらいだ。
言いたいことは伝わってくれたと信じたい。
「俺のお袋もウイの母様も、あの中のどれかなのかもしんねぇな。」
「そうなの、かな。」
星空を見上げていたウイが、母親のそれを探すように視線を散らせる。
それが定まったように止まった時、ウイはハンドルに添えていた手を空に向かって伸ばした。
「届きそう、だね。」
実際、届きはしない。
死んで星になるなんて話は、自分で言い出しておいてこう言うのもなんだが迷信だ。
ただ腕の中で、本当に掴もうとするかのように切なそうな顔で空に手を伸ばすウイを
抱きしめたくなった。
折角変にぎくしゃくすることもなく伝えたい事を伝えられたのに、今はそれをすべきではない。
その代わりに、目当ての星を掴もうと宙をきるその手を握りしめた。
「そうだな。」
本当に届くとでも思っていたんだろうか。
少し残念そうな顔をしたウイが、そっと手を握り返してくれた。
例えいつか
ウイとあいつが上手く纏まることがあっても、この手は決して離さないと
夜空に浮かぶ三日月に誓った。
上を向いているように見えなくもない下弦の月は、自分の決意を込めるには
お誂え向きだと思った。