14-2



「あっ!ウイ!!」
「カレン!アオイー!!久しぶりー!っとと、…」


シャボンディ諸島のとある宿。
事前に聞いてたから迎えに行ったら、丁度二人はチェックアウトしてるとこだった。


会計はアオイの担当なのか
宿の扉を開けた私に気づいたカレンが飛び付いてきた。


「この組み合わせだと会計係はアオイなんだ。意外ー」


しっかり者が居ない今回の旅のお供達。
今まで会計だとかしてるとこなんてどっちも見た事ないからどっちでも意外なんだけどね。


頼れる人が居ないとどちらかがしっかりし出すらしい。


目が合うなり片手を挙げて笑顔を向けてくれたアオイがいつも通り自由奔放なカレンに眉を寄せてた。


「カレン…?」


首にしがみついてるカレンがそう言えば無言だ。
綺麗に巻かれた髪の毛からはいつも通り甘い匂いが漂って来る。


…どうした?カレン


「どしたの?」
「心配した。…でも意外と元気そうね?なに、コミュ障野郎に慰めてでも貰ったの」


腕の力を緩めたカレンの顔がやっと見えた。
心配そうに眉を下げたと思えば、ちょっと不満そうに唇を尖らせる。


コミュ障野郎って、ローのことだよね。
絶対そうだよね、カレンローの事あんま好きじゃないっていうか得意じゃないし。


…そっか。
カレンも知らないんだ。
私の好きな人が、今はもうローではないことを。


亡くしてしまった大切な人が
ただの友達じゃなく恋人だってことも。






「おぅ!ウイ久しぶり!!どうする?観光でもすっか?でもまず荷物置きてぇかも!」
「あ、うん!じゃあまずフリーウィング行こっか!」


アオイは特に…あんまりその辺り気にしてなさそう。
じゃあ行こうぜって先陣切って宿を出ていくその背中を目が追う。


アオイは男の子だし、カレンの荷物でも半分持ってあげようかと思ってそっちを振り向けば
で?どうなの?って色々と聞きたそうな大きな瞳がこっちを覗いていた。


「んー…そういうんじゃ、ないけど。でも元気は貰ったかな。いつまでもへこんでらんないしね」
「そっか…じゃあハイ!半分持って!私達も行こ!」


いや持ってあげようかなって思ってたけどさ…


しれっと重たそうな方を押し付けてくる所は何て言うかカレンらしい。

でもそんなカレンが私は好きだ。


よし…!
忙しくなるぞ!





この組み合わせに何を期待した、私。
いや…流された私も私なんだけど。


「くかー…」


ここはフリーウィングのリビング。
それぞれソファーに転がりながら気持ち良さそうに寝息を立ててる。








荷物を置きに来て、折角だから遊びに行こうって遊園地まで遊びに行った。
シャボンディ諸島の遊園地、それはシャボンを使ったアトラクションも多彩で人生三度目になる遊園地なのに中々新鮮で楽しいものだった。


面子がこうだったのもあると思う。


絶叫、絶叫、また絶叫。


豪速球のジェットコースターで騒いだかと思えば降りた後に次のに走る。
並びながら露店の食べ物を食べ漁って、少し目を話せばカレンとアオイの喧嘩が始まって。


夜のパレードではここの遊園地の公式キャラクターらしい王子様が差し出した手をカレンが掴んで
そのままパレードに参加しちゃったりもした。


凄く賑やかで騒がしかったけど、すっごく楽しかった。
でも、結局もうこんな時間。

お仕事そっちの気で遊び呆けてしまった。


「打ち合わせは…明日だね」


返事なんて返ってくる訳ないんだけど、なんだかそんな言葉が口から出てしまう。


風邪引かないようにって、気持ちよさそうに眠る二人にタオルケットをかけて冷蔵庫からシードルを一本取り出した。


私はこれからデートだ。
今日は楽しいことが沢山あったから、エースに話すことが沢山ある。


明日からは流石にお仕事頑張らなきゃいけないし、当然のように私の部屋に荷物を運び込んだカレンとは暫く同じベッドで眠ることになる。


そしたら中々ゆっくり話、できないもんね。


起こしてしまわないように、そっと扉を開けた。









今日も星は
綺麗だ。





『それで?まだなんの原案も出来てないの?出発してから結構経ってるよね。今まで何してたの、僕忙しいんだけど』


合流した日の翌朝
早く寝たせいで二人が起き出すのは早い。


朝ごはんを食べて、プロジェクトをどうするかって話になった時
私たちがとった行動はディゼルにでんでん虫、だ。


「違うんだってば!ウイがローと離れたくないって合流遅くなったの!ウイのせい!」
「違うもん二日酔いで動けなかっただけだもん!」


スピーカーモードでブラーヴェ本部へ繋いだでんでん虫の前で
私たちの会話は能天気だ。


『取り敢えず原案作ってよ。何のために任されたの、能無し』
「っによその言い方!!考えるわよこれから!」
「考える!考えるけどさ!!ディゼルなにかやりたいこととかないの?それ含めて考えるから!」


相当忙しいのか、でんでん虫からは定期的に書類を捲る音が聞こえてくる。
毒舌なのはいつもの事だけど、昨日1日遊び呆けてた負い目があるから後ろめたい。


『そうだなー、きっとメインはウイのシードルになると思うけど披露宴で出す他のお酒は僕も作りたいかも』
「オッケーわかった!!それ踏まえて考えてまたかけるね!!ごめんねディゼル!!」
「おまえ忙しいとか言ってるけど普段それソニア平気な顔してやってんだぜ?根性ねぇなー!」


…!!


けたけた笑いながら余計な事しか言わないアオイに殺意が沸いた。


なんでこのタイミングでアオイがそれ言うのよ!
折角当たり障りなくでんでん虫切ろうとしてたのに!
っていうか普段どころか臨時でもアオイ本部の仕事やってないじゃん…!!


「確かにー!!どんだけ甘ったれてんのよあんた…!」
「忙しいアピールとかだっせぇよな!!」


おまえら…!!
空気読め!!
空気を!!


この二人の空気の読めなさというか、奔放さには目を疑う。


いや、本人達悪気はないんだけど!
普段は面白いなって笑えるんだけど…!
その場を諫める人が居ない状況でのこれは非常に厄介だ。


『羨ましいな。僕もそんな暢気な事言ってられる頭なら良かった。精々その足りない頭でしか思い浮かばない独創的な企画、頑張ってね』


ガチャン!ツー、ツー、と通話が切れた音に
私一人が肝を冷やしてた。






「なにあいつ。カリカリしちゃって。まぁいっか、どうする?」
「いや…ディゼルが怒るのも無理ないと思うよ…?」


本当になんとも思ってないのか、この二人は結構なガチャ切りをされたのにのほほんと打ち合わせを始め出した。


強い…!
天然って最強だ。


「ディゼルドリンカーの酒作んだろ?カレンはウェディングドレスのレースで、ウイがドレスとタキシードのデザイン担当」
「はいはーい。で?あんた何やんのよ。諦めてティアラとかのアクセサリー作る気になった?」


この二人の変わり身の早さは天才的だ。
さっそく始まった打ち合わせで、カレンが案をメモしながら着々とそれは進んでいく。


「あー…それもやっても良いんだけど。俺招待客に自動巻きの時計振って貰って、それで動き出す時計を新郎新婦にプレゼント、とかやりてぇんだけど」
「なにそれロマンチックー!アオイの癖に」


ほ、ほぉ…。
ディゼル曰くない頭の片方は中々素敵な妙案を持ってらっしゃった。


アオイの腕時計は基本的に全部自動巻きだ。
常日頃身に付けてる事による振動でゼンマイが巻かれて動いてる。


それを参列者が新郎新婦の為に振って動かす。
文句なく素敵な案だ。


「でもさ、あんまり強く振ると時計に良くないんじゃないの?」
「そこは改良?招待客の人数にもよっけどさ、耐震衝撃に強くして一回の巻きで長く動く時計。改良しなきゃ今のじゃキチぃなー」


なるほど。
でもそれが出来たら凄いと思う。


「ソニアには何頼もうか。やっぱ披露宴での乾杯用のシャンパングラスとかかな?」
「えー…なんかそれ目立たないー。んー…アレは!?メモリアルボードみたいなの彫刻してプレゼント!記念に残るし絶対素敵!」
「基本デザイン何パターンか考えときゃ選んで貰えるしな。よし、それで行こう」


本当に、この二人はヤル気にさえなれば凄い。
ものを作る人ってだけあって独創的というか創造力が桁違いだ。


あっという間に結婚式におけるブラーヴェらしさが纏まった。
後は各々がそれを製作するのと、運用面での調整だ。


「結婚式するには式場必要だよね。どこの島にしよう。やっぱり本部の近くかな」
「でもそれだとお客さん限られない?折角色んな島に展開してるんだから色んな人に使って欲しいよねー」


確かに。





うーん、悩みどころだ。




destruct at reality.