「ちょっとキャプテン。行くなら行くってそう言って。」
余り長居すると流石に距離が離れすぎては戻れなくなる。
そう思って名残惜しくもあるものの
ウイの元から戻ってきた。
意外と近い距離に居た船は
ベポがまだ慣れない操縦桿を握って
長居しても俺が戻ってこれるようにと頑張ってくれていた賜物のようだった。
文句を言いつつも見事に海面近くに船を留め続けたこの航海士に
ここにもウイに大概甘いヤツが居たなと、軽く息をついた。
「キャプテン、ベポ、ちょっと来て。」
リビングの扉から顔を覗かせたペンギンが親指で室内を指して着いてくるように促している。
「ウイってば……いつの間にやったの、これ。」
「考える事は結局同じらしいな。」
彼女に船内を案内した時には見当たらなかった物が
リビングには増えていた。
壁際に設置された
彼女の船にあったのと同じデザインのエターナルログポースのコレクションケース。
その上には、オレンジ色の服が綺麗に畳んで置かれていた。
「何も言わないからすっかり忘れてた。これは俺にだね。」
ベポが嬉しそうにつなぎを広げて体に合わせている。
「こっちは俺だな。全く。いつの間にこんなん作ってたんだか。」
ソファーに置かれた白のつなぎの上には
分厚いレシピノートと小さなコレクションケースが置かれていた。
前にウイにピアスのケースが欲しいと言ったらしいシャチが
その箱を眺める目は、孫でも見るようなそんな顔をしていた。
「俺も何か、こういうの欲しいって言った覚えあんだけど。」
あいつの記憶力と再現力おっかねえなと
ネイビーの皮で作られたベルトを腰に巻いて収納部分の確認をしているペンギン。
銃やら剣を刺すのにのに便利そうなそれは
鬼哭が長すぎなければ自分も欲しいと、少し思った。
そしてクルー達の物ではないらしい黒い服のような物と
そこに乗せられた白に黒斑のハット。
本当にいつの間に仕込んだと言うのか
鬼哭の鍔には、ハットと揃いの布で作ったらしい
もこもこした装飾が施されていた。
「ウイの中のキャプテンのイメージって。」
「……悪くねえな。」
鬼哭の鞘を抜いて光にかざす。
本当にこれは、何から何までウイに縁のある刀になった。
鬼哭を鞘に納め、とりあえず帽子もかぶりながら
結構かさ張る黒い布の正体を確認する。
「コート?」
「へー。なんかキャプテン好きそうだしかっけーじゃん。」
材質もデザインも違うそれぞれのロングコートは
襟元の広さや白やオレンジのライン、海賊旗がさりげなくプリントされている所も
ペアルックを断固拒否した自分が着れる範囲で
クルー達との繋がりを連想させるデザインだった。
肌触りの良い薄手の方のそれを羽織ってみる。
コートからはまだ、ウイの匂いがした気がした。
「良いね。何か俺らウイ一色だ。」
話ながらつなぎに着替えていたクルー達と自分の姿は
本当に、身に着ける物から頭の中まで
彼女でいっぱいだと思った。
「で、コレだけど。ヤバくね?この分厚さ。恐怖の手紙。」
「ウイちゃんの愛いっぱーい。」
シャチが手に持つ大きめの白い封筒は
本当に冗談じゃない程の厚みがあった。
”ハートの海賊団の皆へ”
表面に書かれた、見慣れた彼女のその文字を
ウイはどんな気持ちで書いていたのだろう。
シャチから受け取ったその封筒を開けると
中には1枚の便箋と一回り小さな4つの封筒が入っていた。
「あー。なるほどね。それぞれに書いたんだ。」
「これ全部便箋かよって思ってたから、流石にさっきぞっとしたわ。」
クルー達が封筒の中身を覗きこみながら
常識の範囲内の量で収まっていた彼女からの手紙に苦笑いを溢した。
宛名の書かれた封筒を
それぞれの届け先に渡す。
常識の範囲内とは言っても
結構な量が入っていそうだ。
"ローへ"と書かれた手紙の厚みにふっと息が漏れる。
「まずそっち読もうぜ。」
シャチが指さしたのは俺ら全員に向けた便箋。
ソファーに腰かけてそれを開くと
両脇と背後からクルー達がそれを覗き込んできた。
【ハートの海賊団の皆へ】
誰も何も言葉を発さずに
ただ、彼女の文字を目で追っていた。
鬼哭を鞘に納め、とりあえず帽子もかぶりながら
結構かさ張る黒い布の正体を確認する。
「コート?」
「へー。なんかキャプテン好きそうだしかっけーじゃん。」
材質もデザインも違うそれぞれのロングコートは
襟元の広さや白やオレンジのライン、海賊旗がさりげなくプリントされている所も
ペアルックを断固拒否した自分が着れる範囲で
クルー達との繋がりを連想させるデザインだった。
肌触りの良い薄手の方のそれを羽織ってみる。
コートからはまだ、ウイの匂いがした気がした。
「良いね。何か俺らウイ一色だ。」
話ながらつなぎに着替えていたクルー達と自分の姿は
本当に、身に着ける物から頭の中まで
彼女でいっぱいだと思った。
「で、コレだけど。ヤバくね?この分厚さ。恐怖の手紙。」
「ウイちゃんの愛いっぱーい。」
シャチが手に持つ大きめの白い封筒は
本当に冗談じゃない程の厚みがあった。
”ハートの海賊団の皆へ”
表面に書かれた、見慣れた彼女のその文字を
ウイはどんな気持ちで書いていたのだろう。
シャチから受け取ったその封筒を開けると
中には1枚の便箋と一回り小さな4つの封筒が入っていた。
「あー。なるほどね。それぞれに書いたんだ。」
「これ全部便箋かよって思ってたから、流石にさっきぞっとしたわ。」
クルー達が封筒の中身を覗きこみながら
常識の範囲内の量で収まっていた彼女からの手紙に苦笑いを溢した。
宛名の書かれた封筒を
それぞれの届け先に渡す。
常識の範囲内とは言っても
結構な量が入っていそうだ。
"ローへ"と書かれた手紙の厚みにふっと息が漏れる。
「まずそっち読もうぜ。」
シャチが指さしたのは俺ら全員に向けた便箋。
ソファーに腰かけてそれを開くと
両脇と背後からクルー達がそれを覗き込んできた。
【ハートの海賊団の皆へ】
誰も何も言葉を発さずに
ただ、彼女の文字を目で追っていた。
【ハートの海賊団の皆へ
この度は潜水艦の完成、本当におめでとう!
お別れの時、絶対言いたい事全部言えないって思ったので手紙にすることにしました。
色々納得いかなくて、実はこの手紙でTake16。
腱鞘炎になりそうです。
皆と出会ってから、1年とちょっと。
皆とはもっとずっと前から一緒に居たような、そんな気がします。
色んな事があったよね。
楽しいことも、嬉しいことも、悲しいことも、辛いことも。
沢山迷惑かけて、甘やかして構って貰って。
今まで生きて来た中で一番充実していて、
生きてるってこんなに楽しい事なんだって
そう思える毎日でした。
皆があの時、私の船を盗もうとしてくれて、本当に良かった。
なんか楽しそうっていう軽い気持ちで皆を船に招待したけど
皆は私が想像していた以上に
楽しくて、面白くて、格好良くて、素敵な海賊達でした。
そんな皆と出会えた事を、本当に幸せだって思ってます。
そんな感謝の気持ちも込めて、皆にプレゼントを用意しておきました。
不法侵入してごめんね。
驚かせたかったのもあるんだけど
直接渡してしまったら
なんだか泣いてしまいそうな気がしたのでこうしました。
私ちゃんと皆を笑顔でお見送り出来てたかな。
出来てなかったとしても
私はそうしたいってずっと思ってたので
記憶の差し替えよろしくね。
皆が強いのは分かってるけど
無茶だけは絶対に辞めてください。
ローが居るから安心だけど
不摂生な生活も程々にね。
たまには、用事がなくても連絡してね。
近くに居る時は、また皆に会いたいです。
皆の航海が楽しくて実りのある物であることを
離れていても、ずっと祈ってます。
私は皆の事が本当に本当に大好きです。
ありがとう。 ウイより】
「……アイツらしいな。」
手紙を黙読し終えると、彼女らしい文面に
自然と目尻が下がった。
遅れて読み終えたらしいクルー達も
各々が少し寂しそうな、それでいて穏やかな表情を浮かべている。
ウイにも自分の問題に蹴りを付けて貰わなければならない。
しかしこちらも
彼女を迎え入れる為に障害は排除しなければ。
最悪ウイの方はなんとでもなるだろう。
俺を好きだと認めたあの日から
いやそれより少し前から
彼女の欲への正直度合は中々のものだ。
例えドフラミンゴを討った後もまだ
面倒な事をほざいていたとしても
押し切れる。
不意打ちなら更に勝率は上がる。
こんなに目的とすべき事が明白かつ
戦果の保証された状況は今まであっただろうか。
長い間
自分の気持ちも伝わらず
思わせぶりな態度を取られたあげく拒絶され
何を考えているかも
自分をどう思っているかも分からなかった。
あんな状況に比べれば
これは大分精神衛生上望ましいと言えるだろう。
強敵とはいえ、ドフラミンゴさえ倒せば
ウイを手に入れられる。
【私ちゃんと笑顔でお見送りできてたかな。】
出来てねぇな。
潜水後に一人で泣くあたり
やはり涙や弱い所を隠そうとする彼女の頑なさは
そう簡単に変わるものじゃないらしい。
【生きてるってこんなに楽しいことなんだって
そう思える毎日でした。】
常に馬鹿みたいに騒いでいたウイが楽しそうなのは分かっていた。
意図してか無意識かは分からない。
ただあの文面からは
死にたいと願ったことのある人間特有の
心の闇が見えた気がした。
ポケットから先程までウイの耳元を飾っていたピアスを取り出して
彼女と同じ右耳の穴にそれを通した。
なるべく早く迎えに行く。
面倒臭ぇ本人の代わりに
ここで大人しく見てろ。
シンプルなデザインで良かったと思うそれを
彼女の分身か何かかと思っているような自分の思考は
我ながら結構重症だと思った。