7-5

「アイツにそれ言う気はねぇのか。」
「知ってるよ、ウイ。」



今までピクリとも表情を変えなかったキャプテンの顔に僅かではあるが動揺が見て取れた。

もう良いだろう。

俺の気持ちも知った上でキャプテンを好きなウイに
意味のない警戒をする必要なんてねぇ筈だ。




「この先俺に万一のことがあれば、その時ウイを任せれるのはお前くらいだとは思ってる。」
「キャプテン死ぬようなことがあれば俺のが先に死んでるって。」




能力者で、それがなくてもキャプテンは俺より強い。
どう頑張ればそんな修羅場で俺が生き延びれるんだ。




「アイツらも、今後増えてくだろうクルー達も。俺抜きで考えるとお前に任すのが一番安心だ。」
「なんなのさっきから。死ぬ予定でもある訳?」




発言の真意を探ろうと様子を観察してみても流石にそれは読み取れない。

結構自信家で
先のことまで計算しつくすタイプのキャプテンが
自分が死んだ後のことまで考えているというのはどうにも嫌な予感がする。




「俺嫌よ。キャプテン死んだ後べっこべこにへこんだウイの面倒見んのも。下がアイツらだけだとしても、俺がトップ張って色々やんのも。」



まさか死ぬつもりじゃねぇよなという思いを込めてキャプテンを凝視する。

そんなことでウイが手に入ったとしても俺は全然嬉しくない。

気難しくて暴君で
分かりにくいけど仲間思いで
年下なのに何一つ敵うところがなくて

そんなこいつに憧れて、こいつに着いていこうと決めた。
8年前はまだガキで、今よりもっと目先のことしか考えていなかった。

まさかこんなに長い付き合いになるとは思わなかったし
ただ強ぇなって思っただけで
この男がこんなに便りがいのある男だとも
悲惨な過去を背負いながらも信念を果たそうとする実は熱い男だとも分からなかった。

器用そうに見えて実は不器用で
なんだかんだで身内に甘いこいつの幸せを望んだ気持ちに嘘はない。

だからこそ抑えきれないウイへの気持ちを自覚した今も
自分がどうしたいのか分からない。



「自分死んだ後の後始末の為だっつーなら、ウイも副船長も、任されんのはごめんだな。」



この言葉に嘘はない。
色々と分かんねぇことはあるけど



これだけは事実だ。


「じゃあ決まりだな。よろしく頼むぜ副船長。」
「は?」



キャプテンはそう言うと踵を返して部屋を出ていこうとする。



ちょっと待て。



「別に死ぬ予定も死んでやるつもりもねぇよ。あのバカ女残してのうのうと死ねる訳ねぇだろ。」



振り向き様に勝ち誇ったような顔を浮かべたキャプテンは
副船長室に俺を残して去っていった。




俺はもしかしなくても
ハメられたのか?




さっきまでのキャプテンの様子を思い返しても
結構マジな感じに見えた気がする。

でもまぁ結果がこれだ。





ベッドに寝転び天井を見上げると無機質なクロスは白一色で
まだ何もないたった今自分の部屋になったこの場所。




そもそも何で俺が。




今はまだ良いにしても
クルーが増えてくればそいつらの管理もしなければならないだろう。

戦い方も、改めなければならない。





『ペンギンはさ、ルールは理解してるんだよ。ただそこから勝つ為の工夫が決定的に足りない。』





勝負事は勝ちたい派だ。
ウイに前教えられた麻雀の勝ち方を理解はできても
それを出来るように努力するのは正直面倒だと思った。

ただ、実際の戦闘で指揮を取るとなると
今日も五万負けたじゃ済まされない。




『手牌に七筒が何枚あって、河には何枚出てる?自分のツモはあと何回?山に埋まってる確率は?ツモれる確率は?他家から出る確率は?』




暗号のような言葉をつらつらと喋りながら牌効率の良い役の作り方を説明してくれたウイの姿が思い浮かぶ。


面倒とか置いておいたとして
俺にあんな真似ができるのかどうか。






「もっと真面目に聞いときゃ良かったな。」






してやられた感は否めない。
ウイの件もそうだ。
結局譲ってくれる気もないようだし諦めろと言われた訳でもない。


ただ今後は、色々ともう少し真面目に考えながら生きていく必要がありそうだ。




「……めんどくせー。」




この独り言に返事をする相手など今この部屋には居ない。

ただこの微妙な心境を声に出して言いたかった。
それだけだ。




destruct at reality.