主食

「お前には本日づけより別任務についてもらう」

任務の概要を尋ねようとすると立て続けに言葉が重ねられた。

「"鬼"を知っているか?」
「‥‥鬼ですか。妖怪の一種。餓鬼、古より言い伝えられるもののことでしょうか」

言い淀みながら答えると男は一つうなずき続いた。

「だが言い伝えではない、今この世で、鬼が現実にいるといえば?」

鬼がいる?このご時世に?
からかわれているのだろうか。そうかこの男は気が狂っているのか。
本件を問おうと前を見ると、ただこちらを静かに見つめる目と合った。その冷たさから浮わつくような感情がみられない。冗談ではないのか?

「‥‥本当にいるのですか」
「ああ、全く喜ばしくないことにな」

男はため息をつきガシガシと頭を掻いた。

「お前の知ってる餓鬼とはどんなものだ」
「餓鬼とは地獄にいるとされる空想の生き物で主に‥‥
まさか、一つの考えに顔を青ざめた私に淡々とした声が告げられた。

「ああ、お前の推測通り、"ヒト"だ」


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