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「セーフ!おっはよ、今日もかわいいねなまえちゃん。」

「、おはようございます田所さん。」


私がエレベーターに乗り扉を閉めようとしたところにギリギリで乗り込んで来ては、朝から息をするようにセクハラまがいな発言をするこのイケメンが私の会社の先輩である。



「朝からなまえちゃんとエレベーターで二人きりなんて、ついてるなあ俺。」

「そうですか。名前呼び、やめてください。いつ直りますか?」

「俺、物覚え悪いからさっ!」

「へー。仕事は出来るのに?」

「俺のこと仕事出来るって思ってくれてるんだ!嬉しい!」


とかわいいふにゃふにゃの笑顔を見せる田所さん。入社した頃はこの笑顔と発言にだいぶ翻弄されたものだ。この人顔はいいんだ顔は。惚れずに済んだのはデスクとして入社してきた渡瀬さんにソッコー「かわいいね」と話しかけていたのを見たとき、ああ、この人はそういう人か、と悟ったからである。自分で言うのはアレだがこの会社は多分ルックス重視で採用している気がする。それくらいどこの部署の方もまあまあ美男美女揃い。私が所属する第一制作部も例外では無い。この人は近くにいるかわいい女の子なら誰でもいいのだ。田所さんとはそういう生き物だと思っていまは接している。いちいち心をときめかせていた入社一年目が懐かしい。



「相変わらずツレないなあ。新人のときは顔真っ赤にしてかわいかったのにー。」

「実際あのときはキュンキュンきてましたねー。田所さんがもう少し硬派だったら完全に落ちてました、私。」

「え!?まじ!?なる!硬派!なる!なるからご飯いこ!」

「じゃあその硬派になってからまた誘ってください。」



そう笑顔で今日も田所さんのお誘いを断るとちょうどエレベーターが到着した。タイミングよくまた田所さんの誘惑(?)から逃れられた。