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第一制作部は社内でも花形と言われ仕事量もはんぱない。所謂エリートと呼ばれる上司や先輩方とバリバリ仕事をするのは大変だけどとても楽しい。私はこの仕事がすきだ。


そんな第一制作部に異動してきた男がいる。小林司さん。社内報にまで載る仕事が出来る男、かと思いきやそれは社内報のミスで、うちの部署に来た小林司は同姓同名の仕事ができない方の小林司さんらしい。そのミスを目ざとく見つけ部署内に広げたのは田所さんだ。「お荷物社員のニモちゃん」なんてひどい呼び方までしている。


そんな小林さんが、緑と歩く展の納期の迫ったチラシの制作を頼まれたところ、黒川先輩から意外と高評価をもらっていた。いくら仕事が出来ないと言っても、与えられた仕事全てを失敗させてきた訳ではないのかな?と少し見る目を変えようとしたところ、なぜかそれに気付いてふてくされた田所さんが私に絡んできた。そう、この男は目ざといのだ。小林さんが出かけたのを見計らって私に近付き声をかけてきた。



「ねー、なまえちゃんいまニモちゃんのこと見つめてた。」

「え?見つめてなんかいませんよ。自分より年下の男に"ニモちゃん"なんて呼ばれながらもひたむきに頑張ってて健気だなーって思ってただけです。」

「好印象受けてんじゃん!なんだよーなまえちゃんも小林さん派かよー。」


めんっどくさいなこの人。渡瀬さんがイケメンって褒めたの根に持ってるな。別にどっち派でもないですよ、仕事に集中させてください。あなたが土方さんに気に入られたいが為に引き受けた仕事のせいでこっちまでキツキツなんですから。と言いたいところをぐっと堪える。めんどくさくなった田所さんはちょっと褒めてあげると気をよくして仕事に戻る。それか黒川先輩が田所さんを注意してくれてこの絡みはお開きになる。いつもこの2パターンなのだ。

「私はもう少し身長の大きい人が好みです。」とでも言えば機嫌を直してくれるだろうか。この場は収まるが褒めるとこの人は調子に乗るため後々また面倒だ。苦肉の策を使おうとしたところーー

「ちょっと、あんたが土方の言いなりなせいで私たちにまで仕事が回ってきてんの。くっちゃべってる場合じゃないだろ。」

「ひっ!すいませーん。」


黒川節が炸裂した。私の言いたいこと全て言ってくれた。さすが黒川先輩。ありがとうございますの意味を込めてアイコンタクトをすると優しい笑顔を返してくれる。一見お色気たっぷりだが本当は男らしい黒川先輩にはいつもお世話になりっぱなしだ。かっこいいなあ。