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「オレに惚れたかィ?」


試合が終わって沖田さんに会った瞬間、恐ろしい一言を言われた。

「な、何言ってるんですか」
「いや、完全にオレのこと好きな目をしてたからねィ」
「いやいやいや!そりゃ沖田さん顔はいいですから……ど、ドキドキくらいしますけど……」
「なんでィ」


沖田さんはニヤニヤしながら私の顔を覗き込んできた。

「結局お前もオレの顔が好きかィ」
「ちか、近いですって…」
「最初は30点って思ってたクセになァ」
「いや、だからそんなひどい事思ってないですってば」
「ふぅん」
「お、思ってたよりちょっと坊やみたいな顔だなって思っただけで」
「は?」
「あ…」

焦って余計な事を言ってしまった。
怒られるかと思ったが沖田さんは意外にもお腹を抱えて笑っていた。

「ははは、坊やかィ。別にいいけどねィ。」
「あ、いや…その…」
「上等でさァ」

沖田さんのツボはよく分からない。

「あ、沖田さん」
「なんでィ」
「勝利おめでとうございます」
「お、おぅ」

おめでとうと言ったのに驚いたのか沖田さんは一瞬びっくりした顔をして、ぶっきらぼうに返事をした。


「今日はお祝いにコーヒー私が奢りますね」
「今日は疲れたからココアがいいでさ。あまーいやつ。」
「はーい」
「本当はご褒美のちゅーが欲しいんだけどねィ」
「変な冗談やめてください」



私をからかう沖田さん。
照れ隠しなんだろうなぁ、と何となく分かってしまった。




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「あっちィ」

夏が近付き制服も夏物に衣替えをした。

「暑いなら手を離しましょうか」
「なんてひどい事言う彼女なんでィ」

汗をかきつつ沖田さんは私の手をガシッと掴んでいた。

夏休み前のテスト期間に入った為勉強しようと二人でマックに向かっていた。


「そういえば沖田さんは受験生ですよね」
「 オレぁ剣道の推薦でィ。能力買われて色んなとこから声かけられて困りまさ。」
「そうなんですか」

なるほど。沖田さんらしい何とも要領のいい選択である。

「だから勉強は赤点取らねぇ程度に適当にやればいいんでさァ」
「羨ましいです」
「おかげでずっと部活に顔出さなきゃいけなくて大変でさ」
「勉強よりいいじゃないですか」
「まぁ名前は馬鹿そうだから大変だろうねィ」


ムッとしたがマックに着き一緒に勉強を始めたら本当に沖田さんが憎いほど賢いことが分かってしまだた。

「わかんねぇとこあんのかィ?」

そう一言かけてもらって質問をしたら沖田さんはスラスラ〜と説明をしてくれる。

「大事なのは要領でさ」と笑いながらポテトをつまむ。

「あと歴史とか暗記は山はれ、山 」
「そんなゼロか百かなんて出来ません」
「オレがはってやりまさ」

沖田さんは私の教科書を奪い勝手に線を引いていく。ついでに、意味分からない落書きをつらつらと描いていった。



そんな沖田さんにふぅとため息をつき窓から外を見た。陽が落ちる時間が随分伸びた。

もうすぐ夏休みが始まる。



つづく


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