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私がドキドキしてしまったのは、沖田さんがイケメンであるからで、それと少し優しくしてもらったからで、きっと同じ状況ならこの世の女子は皆ドキドキするはずである。だからこれは別に恋ではない…はずだ。

そもそも例え好きになったとしても彼女のふりをしているだけだ。まさか、好きになったなんて言えない。


「不毛な恋はしたくない…」


夜名前は布団に入りながらボンヤリ呟いた。

今日は結局沖田さんに革靴まで買ってもらってしまった。



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週末、沖田さんの試合の日。
学校の近くの体育館でやるらしい。

謎に緊張して早起きしてしまった。
試合って何を着ていけばいいんだろう…少し考えたが自校の応援でもあるので無難に制服にした。

変にはりきった私服を着てても恥ずかしいしなぁ、と思いながらスカーフをきゅっと締める。


試合会場には他校の女子も沢山いた。

「あの子だよ」とコソコソ囁かれる。
沖田ファンは他校にもいるようだ。
こうじろじろ見られるのは慣れてはいるが、ちょっと顔にニキビがあったり寝癖がついてる時は死ぬほど嫌になる。


今日はまぁいいや、と見やすい場所に座った。
しばらくして何人かの部員がちらほら会場に出てきた。沖田さんも目立つ綺麗な髪の毛を揺らし欠伸をしながら歩いてきた。


(なんだか初めて見た時を思い出すなぁ)


剣道着姿の沖田さんを見るのは初対面の時以来であった。

目が合いこっちにヒラヒラ手を振ってくる。
周りのジトッという視線を感じ、微笑を浮かべつつ振り替えした。


「名前の為に勝つんでよく見とけよ」
「は、はぁ」


試合の時間になった。
1人ずつ名前を呼ばれ前に出る。
沖田さんは1番最初だった。

私はそれまで剣道なんて見たことがなかった。

(さっきと別人みたいだ)


面をしていて沖田さんの顔は見えなかった。
しかし放つオーラが素人の私にも感じられた。いつものゆるゆるな沖田さんとは全然違う。

大声と共にバシンバシンと鳴り響く竹刀。
剣道がこんなに激しいものだと知らなかった。
大きい音がなるたび心臓がドキドキと鳴る。

それでも沖田さんは軽々しく身を翻し相手に一撃を与えた。


「勝者、銀魂高校!沖田!」

審判が旗をあげる。


沖田さんが面を取った。
ふわふわの髪が少し汗を帯びて湿っている。そしてこちらを向いてニヤリと笑った。

(ヤバい、カッコいい)

私は今どんな顔をしてるのだろう。
分からないけど、今は誰も私のことを見ないで欲しい。


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