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夏休みが終わった。
新学期初日、沖田さんから久しぶりに一緒に学校に行こうと誘われた。
あの夏祭り以降沖田さんは私にあまり接触を求めてこなくなっていた。会うの自体久しぶりだ。
「お、おはようございます」
「おぅ」
朝待ち合わせ場所で会う久しぶりの沖田さんは相変わらず綺麗な顔立ちをしている。
しかしその表情からは何を考えているのか全く分からず、沖田さんは私の中で未知なる存在へとなっていた。
「久しぶりですね」
「そうかねィ」
前は繋いできた手も今は繋がれなかった。
夏祭りで泣いて面倒くせぇ女と思われ、嫌われたのかもしれない。
「なぁ名前」
「うっ」
歩いてるとセーラー服の襟をつままれた。反動で首がしまる。
「く、苦しっ」
「彼女やめますかィ?」
沖田さんは珍しく小さく掠れた声でぼそりと呟いた。
「‥‥‥‥」
新学期早々ヘビーな一言だ。
いきなりそんなことを言われても何と返事をしていいかわからない。
「お前がイヤなら、解放してやらなくもないでさ」
「沖田さんがイヤなんじゃないですか?」
「オレぁ‥」
沖田さんの顔からはやっぱり何を考えているのか全く分からない。
私がイヤならそう言えばこちらもスッキリ終われるのに、私に選択権を与えてくるのはずるい。
「オレぁ、別に‥イヤじゃねぇけど‥」
沖田さんはふわふわの髪の毛を弄りながら答えた。
「イヤじゃ‥ないんですか?」
「え、本当ですか?」
「ウソは言わねぇよ」
恋する女は単純だ。
好きな人の一挙一動で浮き沈みしてしまう。
沖田さんに嫌いじゃないと言われただけなのに、私の心は空の上まで浮かぶんじゃないかと思うくらい軽くなった。
「じゃあ続けます」
私は何だか浮かない沖田さんにあっけらかんと答えた。
「私も沖田さんのこと嫌いじゃないんで」
こう言った後、久しぶりに沖田さんの笑顔を見た。
偽物の彼女が辛かった夏休み。
今朝そのポジションをやめれば楽になれたかもしれない。
でも私はやめなかった。
沖田さんとしばらく会わない期間に分かったことがある。
偽物の彼女を演じるよりも、沖田さんに会えない方がずっと辛かったのだ。
「新学期からやるなぁ」
下駄箱につくと画ビョウが沢山入っていた。未だに沖田ファンは私に地味な嫌がらせをしてくる。
今までは私は悪くないのに、とモヤモヤしたりもしたが、
今現在私は沖田さんを好きになってしまっているので、少し罪の意識が生まれたことでこの嫌がらせも快く受け止めることが出来た。
「相変わらず人気者だねィ」
画ビョウをじゃらじゃら袋に入れる私に沖田さんは感心したように口笛を吹いた。
「人気者なのは沖田さんです」
「秋は文化祭があるからねィ。もっと人気でちゃうかもな〜」
「文化祭?」
「ミスコンでさ。出たくもねぇのに勝手に推薦されて迷惑極まりねぇイベントだぜ」
「ミスコン‥」
学校一の女子と男子を決めるコンテストらしい。沖田さんはこれまで二連勝しているとのこと。
「と、いうことで鋼の心を鍛えといてくだせぇ」
これ以上沖田さんの人気が出るのは困るなぁと思いつつ、文化祭がどんな感じなんだろうとワクワクもした。
教室について先ほど集めた画ビョウを備品入れに入れた。
これが結構日課になっているので備品入れを見た担任が「このクラスは画ビョウが凄いことになってる」とビックリしたこともある。
一時期クラスの人達に総シカトされていたこともあるが、最近はそれもなくなってきた。
クラスでは久しぶり、という挨拶がチラホラ聞こえる中、文化祭の話題もだいぶ上がっていた。
「文化祭クラスでなにするのかな」
前に沖田さんのファンだった友達も今は普通に話す仲に戻っていた。
「今日始業式の後のホームルームで決めるらしいよ」
「なるほど」
高校生活初めての文化祭。
鋼の心を持って何事もなく過ごしたい。勿論楽しく過ごせれば何よりだな、と思った。
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「うちのクラスでは他にないことをやりたい」
「他にないことってなんだよ」
「他にないこと‥?」
クラスの出し物について、うちのクラスは他にないことをやりたいらしい。
高校生らしい発想で、実に難題である。
結局思い付かずコスプレ喫茶となる。
くじ引きで衣装を決めた。
「‥赤ずきん」
くじを引いたら赤ずきんだった。普通だ。平凡でいい。私は平凡で平和に目立たず過ごしたいのだ。勿論楽しく過ごせれば何よりだ(2回目)
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