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女子達から逃げるように人気のない隅っこで沖田さんは立っていた。

「あれ、戻ってきた。よく逃げなかったですねィ」
「もう、今さらですよ」
「これからはちゅーし放題って事ですかィ?」
「な、何言ってるんですか!」

沖田さんは私とキスなどして楽しいのだろうか。
キスをするのであれば、もっと美人な人と付き合えばいいのに。
なんで私なんだろう。

「‥沖田さんって女の人に興味ないのかと思ってました」
「あァ?」
「ちゃんとした彼女、作らないから」
「面倒なだけでさァ」

偽物の彼女作る方がずっと面倒だと思うが、そのことについては黙っておいた。

「沖田さん、私からかわれて結構怒ってますよ」
「ん?」

沖田さんの首もとをグイっと引っ張った。
そのまま背伸びをして沖田さんの顔を引き寄せる。

唇を奪ってやった。

「‥仕返しです」
「っ〜〜」

自分でやったとはいえ、
私は顔から火出るほど真っ赤だったが、沖田さんはそんな私よりずっと真っ赤になっていた。

「沖田さん、赤い」
「っ〜〜るせー!見んな!バカヤローが!」
「アハハ、写真撮っていいですか?」
「絶対ェ駄目だ!」

いつもやられてばっかりで気づかなかったが新発見だ。

沖田さんは普段どエスなくせにやられると打たれ弱いらしい。

一生懸命手で顔を隠しているが指の隙間から真っ赤に染まった頬が見えた。

「クソ、もうオレぁ、ミスコンの集まりいくからな!覚えておけよ!」

ついクスクス笑っていると、沖田さんは逃げるように立ち去っていった。

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「あ、名前ちゃん。いたいた」

沖田さんがいなくなってすぐ近藤さんに声をかけられた。

「ミスコンの会場行くだろ?総悟に名前ちゃんのこと頼まれたんだ」
「沖田さんに?」
「護衛だよ。アイツのファン過激だからな」
「あ、土方さんまで‥」
「おぅ、さっきは邪魔したな」
「いや、そんな‥もう忘れて下さい」

土方さんも近藤さんの後ろからやって来た。さっきキスをしてるところを見られたのもあり気恥ずかしい。

3人で会場となっている校庭のステージまで歩く。途中何人かの女子に睨まれたが土方さんが瞳孔が開いた視線で追い払ってくれた。

「しかし名前ちゃんと付き合って総悟変わったよな」
「あぁ、コッチは護衛までお願いされて敵わねぇよ」
「どこが変わったんですか?」
「いや。アイツそもそも女なんて興味なかったのに今もう名前ちゃんに心底惚れてるじゃねぇか」
「えっ。それはないです!ないです!」

「今日だってよ。そもそも面倒ごとが嫌いなアイツがオレらに護衛まで頼んでミスコンのステージ見て欲しがってんじゃねぇか」
「え?」
「格好いいとこ見せたいんだろ。男って単純だからな。分かるなぁ気持ち〜」

近藤さんはニコニコと私を見つめた。

「さっきもちゅーしてたんだろ。どうりで珍しくあのセット作り気合い入れてると思ったら名前ちゃんとちゅーしようと思って頑張ってたんだな。総悟も可愛いとこあるよな!」
「壁と木の隙間をミリ単位で計ってたけどこの為だったとはな‥。ったくお化け屋敷はいちゃつく場所じゃないっつの」

あの人は結局私が赤ずきんの格好をしてようがしてなかろうがあそこに連れ込む予定だったらしい。

「心なしか顔つきも優しくなったしな」
「お熱いこった」

沖田さんが私に惚れてるなんて。
まさかありえない。
二人は私が偽装の彼女だって知らないからそんな事言うんだ。

「そ、そんな。違いますって」
「そういやこの前授業中寝言で名前ちゃんの名前言ったよな」
「ハハ、あれ笑えたな」

いつの間にかミスコンは始まっていた。

司会者が沖田さんを紹介している。
沖田さんはもう狼男でなく制服を着ていた。
ステージの上で圧倒的声援を浴び、スポットライトで照らされる沖田さんは眩しくて遠い存在に思えた。

(沖田さん、格好いいなぁ)

2位と何倍もの点差をつけて沖田さんは優勝をかっさらった。
本人は当然だと言うように気だるげに愛想笑いを浮かべている。

表彰式の後に颯爽とステージを降りて私のところへとやって来た。

「近藤さん、土方さん名前の面倒ありがとうございやした。もう邪魔なんで周りの女子達巻き込んで消えてくだせぇ」
「オイィ!もっと言い方あるだろ」
「名前これあげまさ」

沖田さんはかぶっていた優勝の王冠を私の頭にのせた。

「え!いいんですか?」
「いつも妬み嫉みに耐えてるご褒美でさ」
「ありがとうございます」
「オレぁ、かっこ良かったろ?」
「沖田さんが1番ピカピカしてました。おめでとうございます」
「惚れなおしたかィ」
「ふふ。沖田さんこそ、私のこと寝言で呼ぶくらい大好きみたいですね」
「は!?」

沖田さんの表情が固まりまた真っ赤になっていく。
失礼ながらやはり何とも可愛い。もしかしたら私もどエス側の人間なのかもしれない。

「名前てめー誰に聞いた!」

近藤さんや土方さんが言うように、もしも、本当に沖田さんが私のこと好きだったらいいのにな。

いつもは自分の気持ちに嘘をついて後ろ向きだけど、
今日だけは、今だけは、ほんの少しだけ自惚れることにした。


つづく


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