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眠い。
時間は午後1時半。
太陽の光が校庭全体を照らし、窓からは風が教室へと気持ちよくそよいでいた。


(だめだ眠い)


もう一度時計を見る。
先ほど見た時とほぼ変わらない時計の針が授業が終わるには時間がまだたっぷりある事を知らせた。

お昼を食べた後の授業は眠気との闘いである。これは世の中の学生皆が直面する問題であろう。

英語の先生は黒板にリズムよく白いチョークを走らせる。私は黒板の質感が嫌いだ。あの爪との相性最悪な質感。あまり触りたくない。チョークも手が汚れるから苦手だ。


その点消しゴムはよい。ふにふにした質感は愛らしささえ覚える……。名前は欠伸をかみ殺しながら消しゴムを触った。
しかし、眠気に半分やられている頭のせいか、はたまた消しゴムが謎の反抗心を見せたのか、気を緩めた瞬間ピョーンと手から落ちていってしまった。


(あ、)


消しゴムが机から落ち、はずみをつけて飛んでいく。そして横に座っている生徒の上履きにぶ
つかり静止した。


(やば)


隣の生徒は名前の苦手な人物であった。今回の席替えで隣になってしまいこっそり落ち込んだのが1週間前のことだ。

いわゆる不良な男子学生。
授業にいることは少ないが今日に限って机の主は座っている。


「あ…と……た、高杉くん」


私は今まで悪い人と関わったことがない。どうしよう、殴られたら……おそるおそる声をかけた。

高杉君が気だるそうにこちらを向いた時には、あんなに自分を悩ませていた眠気はどこか遠くにに吹っ飛んでいた。


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