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そもそも名前との出会いはコイツの猫を拾ったことだ。
あるぽかぽか晴れた日のことだった。
白い猫が巡回中のオレの足元にすり寄ってきた。
「あ?」
「にゃー」
「え〜副長って動物に気に入られるタイプなんすね〜」
一緒にいた山崎が笑いをこらえて言ってきたので何だかむかついてパシーンと頭をはたいた。
「なんだオメェ首輪してんじゃねぇか」
真っ白な猫の首には赤い首輪がついていた。
どうりで人懐っこいわけだ。
野良猫と違い毛並みも良い。
拾い上げると首輪についている金色の鈴がチリンと綺麗な音をたてた。
「近くに飼い主さんいるんですかねぇ」
山崎は叩かれた頭を押さえながら回りをキョロキョロと見回す。
「まぁ猫だからよ。散歩でもしてんだろ」
猫を道に下ろすと慌てたようにまたオレの足元にすり寄ってきた。
「にゃー」
「ついてくんなよ。オレぁお前の飼い主じゃねぇ」
歩く後ろをピョコピョコついてくる白猫。
今まで特に動物に好かれた覚えはない。一体何なんだ。
結局白猫はそのまま屯所までついてきてしまった。
「副長が猫拾ってきたぞぉぉ!」
「土方さん、ついに寂しさを紛らわす為に小動物に走りやしたか‥。見てらんねぇでさァ」
「ちげぇよ!勝手についてきたんだよ!!」
何故だか他のヤツには目もくれず白猫はオレの傍を離れなかった。
(こんなちぃせぇ生き物、どうやって接していいか分かんねェ‥)
オレの部屋にまでついてきた猫は座布団を陣取り、居心地良さそうにうとうとしていた。
気付いたらタバコを買いにいく名目を立てコンビニに行き、一緒に猫缶も買っている自分がいた。
「お前、家出してんのか‥?明日飼い主探しにいくぞ」
買ってきた猫缶を美味しそうに食べる白猫の頭を撫でる。
猫の額は狭いと言うが本当に狭いんだな、そう思いつつ「お前可愛いな」と呟いたところを総悟に見られニヤリと笑われてしまった。
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次の日、白猫は相変わらずピョコピョコオレの後ろをついてきたので、そのまま一緒に屯所を出て昨日出会った場所に向かった。
「シロ!!」
昨日の場所に着くやいなや白猫に向かって走ってくる女が現れた。
この白猫はシロという名前らしい。なんて単純な名前なのだろうか。
しかし何はともあれ案外早く飼い主が見つかったので良かった。
「え‥‥、うそ。もしかしてあなたが面倒見てくれてたの‥?」
飼い主はオレを見るなり目を見開いた。
そして急にお腹を抱えて笑いだした。
「やだ、真選組‥。警察の人なのね」
「あ?」
「ありがとう、犬のおまわりさん」
迷子の猫を助けたお巡りさんになってしまった。いや、間違ってねぇけど。
女はクスクス笑い「お礼させて」と昼飯に誘ってきた。
「私あそこの喫茶店で働いてるの」
これがオレと名前の出会いであった。
「えーやだ。年下?絶対年上だと思った。瞳孔開いてて怖いし」
「悪かったな」
名前はそう言うとオレの額に急に触れた。
「あ、前髪上げると可愛い顔してんだね。年相応〜」
「っな、何だよ」
「えーやだ。顔赤いよ。意外に可愛い〜」
「うっせぇ!あーもう見んな!!」
こんな風にオレに接してくる女は初めてであった。大体の女はオレに怯えるか、真選組副長という立場だけに目的があるやつだ。
そんなこんなで従業員の名前と気楽に接する事が出来るということと、そこの喫茶店が分煙をしていて昼にもタバコを吸えることもあり、週に何度か昼飯に通うようになった。
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