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「ち、違うよ。大丈夫だよ。飲んで。」
「平気でさ」
「飲んでってば!」
「‥嫌でさ」
「どうしてよ!」
「オレみたいな化け物の為に犠牲になって欲しくねぇでさ」


私は何でこの人を怖いと思ってしまったんだろう。

この人はこんなに優しいのに。

自分の情けなさに涙が出そうになった。



「っ、、ばかっ」



青白い総悟の首に思いっきり噛みついた。



「っ、痛っっぇー!な、な、何をっ、」
「総悟のまね」
「ひ、ひどいでさ‥。オレのは気持ちいいはずでさ」


総悟の首に腕を回す。



「うん。だから食べていいよ。」

総悟の赤い瞳の瞳孔が開く。



「なに言ってるんでさ‥やめてくだせぇ。こんな状態で、今自分を止められる自信ねぇでさ」


「総悟になら、食べられても、いいよ」
「っー‥」


総悟はしゅるると私のスカーフを外した。

「どうなっても知らねぇからな」

はぁ、と深呼吸をはいて総悟は私の首に歯を立てた。


「あっ、」

血の匂いと総悟の匂いが混ざって鼻をかすめる。



「名前、名前」

「そ、うご‥」

「もっと、、欲しいでさ。名前‥」



総悟の手が制服のボタンをピンっと飛ばした。

吸血鬼は力が強い。人間の何倍も強い。

でも私に触れる総悟は、いつもそっと優しかった。



「総、悟」
「名前、好きでさ」
「っ」
「‥怖がらないでくだせぇ」





赤い瞳から涙が流れていた。
総悟はきっといつも自分と戦っている。
私の知らない吸血鬼の総悟の心。

急に人間じゃなくなってしまい、誰よりも怖がってるのは総悟本人なのかもしれない。



「好きだよ、総悟。

吸血鬼でも、人間でも、関係ないよ」



唇が重なった。


身体があつい。
私の力で総悟の冷たい身体があったかくなればいいのにな、

ぼんやりそう思った。






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「どうして、こうなったんだろう」
「どうしてって、そりゃ名前が食べていいって言ったんじゃねぇかィ」
「こ、こんな意味で言ったんじゃないよ!」

「何でィあんな気持ちよさそうにしてたじゃねぇかィ」
「っそ、それはっ」



違う意味でも総悟にぺろりと食べられてしまった。

血を吸って力が戻った総悟はすっかり顔色が戻っている。
一方私は血も吸われ、予想外の体力と気力も奪われくたくたであった。

服を着ようと布団から出ようとしたが全然身体に力が入らない。

「立てない‥」

総悟はそんな私を見て

「血ィ吸われんのとどっちが気持ち良かったかィ?」

と、ニヤニヤと八重歯を見せて笑った。







vampire

おわり


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