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物心ついた時には孤児院にいた。
孤児院での生活は平和そのものであったが五歳の時その孤児院も戦によって燃やされてしまった。

何とか戦禍から逃げられたのはいいものの食べ物に困り、どうしていいか分からず道にへたりと座り込んでいた。
もう小さい身体では体力も気力も限界であり、規則的な呼吸をするのがやっとだった。
そんな時ふと視線を感じる。




「…?」
「ガキが目の前で死ぬな。胸くそ悪い」
「…死ぬのかな」
「死にたくねぇってか」


声の主へゆっくり視線をやると男が立っていた。霞む視界に派手な着物がやけに目に眩しい。


「死にたくない…」


そうポツリと口にしたきり意識が遠くなった。







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目を開けると天国ではなかった。
かといって地獄でもなく、布団の上であった。
横にさっきの男が寝ている。


男は顔に包帯をしていた。
片方の目が隠れている。気になってそっと手を伸ばした。


「触んな」
「わっ」


包帯に触れかけた瞬間、寝ていたはずの男の目が見開いた。
驚いて身体がビクッとなる。


「調子こいてんじゃねぇ、ガキ」
「……お兄ちゃんケガしてるの?」
「ちげぇよ。起きたなら来い」


男はそう言って私の手を引いて立ち上がらさせた。
しかし引っ張られ立ったもののドスンと音を立てて膝から崩れ落ちる。


「力、入んない」
「チッ。面倒なの拾っちまった」


男は着物の中からゴソゴソと何かを取り出す。

「食え」

出されたものは小さくてキラキラした丸い球体だった。言われた通りパクりと食べるがキラキラした表面がごわごわまとわりついてうまく食べられない。


「んご、…ん?」
「腹減ってるからって紙ごと喰うなよ」
「紙?どうやって食べるの?」
「てめぇチョコも知らねぇのか」
「うがっ…」


男が私の口に手を突っ込んできた。
ごわごわまとわりついていた紙を取り出す。
それと同時に何かが口に残り甘く溶ける。


「お、美味しい」
「そうか」
「生きてて良かったぁ」
「クク、何だそれ」


チョコというものを生まれて初めて食べた。これを食べずに死ぬところであった。生きてて良かった、そう言葉にしたら初めて男の笑顔が見れた。


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