私__美澄叶は『超高校級の美容学生』として、希望ヶ峰学園からのスカウトを受けた。
父は有名ブランドのデザイナー、母はランウェイを闊歩するトップモデル。
私が『超高校級』になった理由に、少なからずその影響はあったと思う。連れられたショーで、私がそれでもひときわ惹かれたのは、母の魅力を最大限引き出すメイクだった。
キラキラした世界は昔から大好きで、よく見ていた。父が見せてくれるアイディアスケッチ、母が纏う華やかなドレス……美のエッセンスと過ごすうちに、輝きをまとう人を、より輝かせる方法が、私には感覚的にわかるようになったの。
みんなの自己実現、なりたいものになれる魔法を私はかけることができた。時には恋する乙女の背中を押すように、時にはコンプレックスにうつむく彼女が上に向けるように。
特に、自分が喜びを感じたのは、人の哲学に触れたとき。その人が信じる美学に触れて、共感して、さらに寄り添って彼ら彼女らの可能性を広げられたときだった。
希望ヶ峰学園は美容系のコースはない。美容を極めるのなら、今までどおり美容学校に通いながら、両親の人脈を使って好きなものに好きなだけ触れる日々を過ごしたほうが良かったのかもしれない。
でも、私がここを選んだのは、……才能にあふれる人が、すなわち自分の哲学を持った人がたくさんいる。そんな人を彩ることができる環境だと思ったから。
……………。
そう、確かに、そうなんだけど。
「ということで、美澄叶さんだよ。彼女は超高校級の美容学生なんだ」
なんで、目の前の知らない男の子が全部知ってるんだろう?
ホテルのプールサイドでくつろいでいた彼女に声をかけるまでは、こんなことになるだなんて思わなかったのにな……
上をくるりと向いたまつげと、水面を見つめる瞳が印象的だと思った。隙がないようで、どこかぼんやりと物思いにふける彼女が気になって、そっと近づくと、すぐに気配に気がついて振り向く。
「……こんにちは」
凛とした声だと思った。プールの水が流れる音が、涼やかに響く。
穏やかな空気が、あたりを満たされていた。
__狛枝が、とんでもなく長い尺で、彼女の半生を語り始めるまでは。
「なあ……引かれてないか? 狛枝」
『超高校級の美容学生」……そう狛枝に示された制服の彼女、美澄叶は、もはや不信感を隠そうとしていなかった。
「え? そうかなあ。希望ヶ峰学園スレに書いてあるのを教えてあげただけなんだけど……」
「……何、それ」
狛枝は彼女が警戒心を顕にしても、どこ吹く風といった感じで、困ったような顔で彼女を見つめ返していた。
コイツ、やっぱりちょっと変わってるよな……
「ああ、美澄さんは芸能界に出入りしているからこそ、ちょっとした有名人みたいなんだ。おかげで一部で熱烈なファンがいるみたいで、スレッドに細かい情報が乗ってたよ」
聞かなきゃよかった……そんな声が聞こえてくるような、苦虫を噛み潰したような表情だった。
「それに僕、彼女にはシンパシーを感じてるんだよね」
なんてこんな僕に言われたって嬉しくなんてないだろうけど……自嘲気味に笑った狛枝が自分の世界に入っていくのを尻目に、少しやつれた顔をした彼女に「早く逃げろ」と目配せをした。