”個性”を悪用する”敵(ヴィラン)”により混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた一つの職業が、脚光を浴びていた。
それが”ヒーロー”。
「大和、大和!ついに来たねっ雄英高校!」
「ん、そーだな。」
目の前にそびえ立つ校舎に思わずテンションが上がる飛鳥と少し寒そうにマフラーに顔を埋める大和。
ここは雄英高校。正式名称は国立雄英高等学校。
あのNO.1ヒーロー、オールマイトを始めとするプロヒーローを多く輩出している名門校でありヒーロー科、普通科、サポート科、経営課と4つの学科に別れている。中でも人気があるヒーロー科の入試は300倍の倍率と言われている。
そして今日は入学試験、実技演習試験の日。
「にしてもすげー人だ。さすが入試、300倍の倍率……」
「ふおおお……!!」
「飛鳥…緊張してる?緊張しすぎで変声出してるし」
そう話しながら歩く学校の門を潜る飛鳥と大和。雄英高校は憧れのオールマイトと二人の両親が通った学校であり倍率も偏差値も高いその入学試験に飛鳥は緊張していた。
ちらっと大和を見てこう言った。
「そーいう、大和は緊張してるの?」
「…まあ、してる」
と言う割には緊張しているように見えない大和だが彼も緊張している。そう見えないようにしている。双子の姉である飛鳥にはお見通しのようだ。じっと大和を見るとその視線に気づき不思議そうに飛鳥を見る。するとフッと小さく笑った。
「ほら、飛鳥」
そう言って大和は飛鳥の手を握った。これは小さい頃からよくやる"おまじない"だ。二人の近くにいる人達はそれを見て驚いているが二人は気にしない。
「だいじょーぶ。俺達はお母さん達みたいにヒーローになるんだ」
「……うん。ありがとう」
「…なんて自分にも言い聞かせる」
ぼそっと言ったつもりの大和だが飛鳥は聞こえていた。ここは聞こえてないフリで何も言わないでおこうと決めて飛鳥はニッと大和に笑いかけ、「よし、行こう!!」と手を握ったまま歩き出した。
「おい、飛鳥…!」
「え?わあっ!ごめんなさい!」
「ごっごめんなさい……!!」
歩き出したた飛鳥は前にいたリュックを背負ったそばかすが特徴の男の子、緑谷出久とぶつかってしまった。
慌てて謝ると飛鳥より慌てて謝る緑谷。どこかオドオドしている姿に飛鳥は私みたいに緊張しているのだろうか…と思い手を伸ばした。
「えいっ」
「へあっ!?」
「これねー、緊張をなくす"おまじない"だよ。緊張しちゃうよね」
ぎゅっと緑谷の手を握る。初対面で女子とあまり関わったことのない緑谷は顔を真っ赤にしていた。そんな初心な反応に可愛いと思っていると「やめろ」と大和にチョップされた。
「いきなりされたら驚くだろ。ごめんな…こいつが突然」
「ただ緊張をほぐそうと……」
「初対面でそれはやめろって。ほら、もう行くぞ…本当にごめんな」
もう一度、緑谷にに謝りながら飛鳥の腕を引っ張る大和。それに対して「い、いえ…!」とやっと声が出た緑谷。
「はいはーい。じゃあ、またね!そばかすくん!」
「変なあだ名つけるな。……お互い頑張ろうな。またな」
手を振る飛鳥に緑谷も小さく手を振った。そして、女子との会話二回目に感激しながら校舎内へ入った。
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