かたり。指で摘んだチョコレートが箱の中に落ちた。微かに震えた指で再び摘みながらギルガメッシュの方を見れば、ワインのような深紅の目が、楽しそうに細められた。
「どうした?」
「ほんま、趣味わる……」
ここ数日、バタバタと忙しなく動いていたせいで、ギルガメッシュに渡すチョコレートを用意するのを忘れてしまったのが事の発端だった。恐る恐る部屋に戻ったルーラを待ち構えていたのは、今日だけで嗅ぎなれてしまった甘い匂いとやけに機嫌の良いギルガメッシュで。手招きされ、近づいたが最後。足の間に座らされて、こうして口移しでチョコレートを食べさせる羽目になったのだ。
「普通に食べたらええのに…」
「何、たまにはこのような趣向も良かろう。我がわざわざ場を整えてやったのだ。貴様が乗らぬ、という訳にはいかぬまい」
楽しげにそう言うギルガメッシュにため息を吐きそうになるのを押さえ込みながら、チョコレートを口に挟んで口付ける。そのまま僅かに空けられた唇から口内にへと押し込めば、ギルガメッシュの薄い舌がルーラの舌に触れた。
「っ、ン……んぅ、」
2人分の熱がチョコレートを溶かして、口の中に特有の甘さが広がってくのを感じて思わず顔を顰める。自分が甘いものが苦手なのを知っているくせに、こういうことをしてくるのだから本当に意地が悪い。
せめてもの抵抗で目の前の体を押すが、さすがにビクともしない。それどころか強い力で体を腰を抱かれ、逃げ道を失ったルーラはただギルガメッシュにされるがまま、口付けを受け入れるしかなかった。
「んッ、んう……ふ、ぁ、んんっ、…ぁ、ん、…」
思わず後ろにへと引っ込む舌を、逃がさないと言わんばかりに絡め取られる。舌先を吸われ、甘く噛まれ、上顎を擽られる。口内の全てを余すことなく貪るようなキスに、次第に思考が蕩けていく。
「ァ、んぅ…っン、ぁ…ンンっ、んッ…」
くらくらしてしまうのはチョコレートの甘さのせいか、ギルガメッシュの魔力のせいか。無意識のうちにギルガメッシュの首の後ろに手が回る。自分から強請るように舌を合わせに行けば、ギルガメッシュがわずかに笑ったような気がした。
「ひぅ、んぅ、ぁ………」
口内のチョコレートが完全に無くなり、満足したのかギルガメッシュの唇がゆっくりと離されていく。名残惜しむようにチョコレート混じりの銀糸が2人を繋ぐように引いて、プツリ、と途切れた。
「お、さま……」
「口付けの後は誠に好い顔をするな貴様は」
キスだけで完全に力の抜けてしまった体が、ペたり、とギルガメッシュの足の上に座り込む。ぜえ、ぜえ、と息を整えれば、ひんやりとしたギルガメッシュの手がルーラの口元に垂れた唾液を拭って、ふたたび背中に回される。
「して、まだ、残っておるぞ」
吐息混じりの低く、甘い声で耳元でそう囁かれ、ルーラの体がぴくり、と跳ねる。
涙が薄く張った目で目の前の顔を見上げれば、ギルガメッシュの美しい瞳が楽しげに歪められ、ひ、と引きつったような声が漏れた。
「我の用意した菓子だ。しかと味わえよ」
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