「おーさま?」
豪華な寝台の上。ギルガメッシュの隣に座って今日あったことを話していれば、ふ、とギルガメッシュの顔が近づけられる。唇が触れる、そう意識した瞬間、ルーラはギルガメッシュからのキスを遮るように手を口の前に滑り込ませた。
「おい、なんのつもりだ」
止められたギルガメッシュが不機嫌そうに眉を顰めるが、こっちも死活問題である。バクバクと暴れる心臓を押さえつけながら、ルーラはギルガメッシュを見上げた。
「…その、キスするんやったら一旦ちょっと心の準備をさせて欲しいというか…」
しどろもどろになりながらそう伝えれば、紅玉の目がきゅ、と細められる。考えているのか、ギルガメッシュの眉間に皺が寄る。ダメだったかもしれない、と下を向けば、ギルガメッシュの手が頬に触れた。
「まあ良い。今の我は気分が良いからな。貴様の準備とやらが整うまで待ってやる」
薄く笑いながらそう言うギルガメッシュに、ほ、と胸を撫で下ろすと、ルーラはゆっくりと息を吐いた。大きく息を吸って、吐き出す。手持ち無沙汰なギルガメッシュが己の髪をいじっているのを感じながら、何回も深呼吸を繰り返して気持ちを落ち着かせる。
暴れ回っていた鼓動が落ち着いて、準備できた、と顔をあげようとした瞬間、そこでルーラはふ、と思い至る。
(うちこれからおーさまとキスすんの…?)
考えただけで落ち着いたはずの心臓がまた脈打つ。心の準備をさせて欲しいと言ったのは自分ではあるが、こうして準備をしてキスをする、となるのと大分はずかしいことに今更気づく。なんと言おうか、と悩んで入れば待ちくたびれのか、ギルガメッシュの手のひらがルーラの頬に触れた。
「おい、準備とやらは終わったか」
「お、さま」
そのまま顔を上げさせられ、ギルガメッシュと目線が合う。何か言葉を紡ぐよりも先に、ゆっくりとギルガメッシュの唇が触れた。軽く表面が触れて、離れて、また触れる。啄むような軽い口付けでも、慣れていない自分にとっては未知の体験だった。
「ふっ、んッ……」
ギルガメッシュの顔が近い。唇が離された時に呼吸を感じて、顔が赤くなる。速く脈打つ心臓の音がギルガメッシュに聞こえているかもしれない、と想像するだけで体が熱を持って、ルーラは知らず知らずのうちにギルガメッシュの服の裾をきゅ、と掴んだ。
何度も触れるだけのキスが繰り返されたと思えば、ギルガメッシュの舌がぺろり、と唇が舐めた。驚きでぴくり、と肩が跳ねる。どうすれば良いかわからず戸惑って入れば、ギルガメッシュの顔がゆっくりと離された。
「貴様…誠に慣れておらんのだな」
「やからうちおーさまが初めてや言うたやん!」
驚いた顔をしながらそう言うギルガメッシュに言い返せば、ギルガメッシュの口角が僅かに上がった。ろくでもないことを考えているのと同じ時の顔に、思わず 顔がひきつる。ギルガメッシュから距離を取るように後ずさるが、直ぐに引き寄せられ、ギルガメッシュの腕の中に捕えられる。
「な、なにおーさま…」
「いや、楽しみが1つ増えたと思ってな」
「ひぇ」
楽しそうな顔をしながらそんな事を言われてしまえば、身構えてしまうのも無理は無いだろう。喉をひきつらせながら視線をうろうろと彷徨わせていれば、ギルガメッシュの口がルーラの耳元に寄せられた。
「貴様に、我が全て教えてやる」
情事を思わせる低く、甘い声が吐息混じりに耳に吹き込まれる。たったそれだけで、ルーラはもう抗うことなどできないのだ。
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