例えば。ギルガメッシュに優しく触れられる瞬間だとか、甘く名前を呼ばれ抱き寄せられる瞬間だとか。自分には不相応なほど、たくさんの愛や優しさを貰う度、ゆっくりと首を絞められているような感覚がする。
ずっと欲しくてたまらなかったものが、急に与えられた反動か、それともかつての罪の意識が残っているのか。ギルガメッシュに甘い感情を与えられる度に、しあわせな気持ちとそれを受け入れられない気持ちが同時に生まれてしまうのだ。
「ルーラ」
寝台に端に座ったギルガメッシュが、とろけるような甘い声で名前を呼ぶ。その声に従うように傍にへと寄れば、ギルガメッシュが満足そうに笑って、ルーラにへと手を伸ばした。
こうして2人きりになった時、ギルガメッシュは気まぐれに触れてはルーラのことを甘やかす。今日もいつもと同じようにギルガメッシュ指が触れて、撫でられて。たったそれだけで、涙が溢れ出した。
「ぁ…」
「…おい、なぜ泣く。よもや我の寵愛が要らぬとでも言うつもりか」
「ごめ、ん……おーさま、ごめんなさい……ちゃう、の、ごめんなさい、」
ほんの少し剣呑さを滲ませたギルガメッシュの声に慌てて涙を止めようと必死に目をこすれば、それを咎めるように腕がつかまれる。
涙でぐちゃぐちゃになった顔なんてギルガメッシュに見せれるようなものでは無い。ギルガメッシュから顔を隠すように下を向いてどうにかして涙を止めようとするが、全く止まる気配がなく、ごめんなさい、ともう一度呟けば、腕を引かれ、体を抱き寄せられた。
「全く…貴様はつくづく手のかかる。我の手をここまで煩わせるものもそうおらぬぞ」
口ではそう言いながらも涙を止めようとしてくれているのか、ギルガメッシュの手が背中を触れて、乱雑に摩る。その行動だけで胸がきゆう、と締め付けられて、息が苦しくなった。
ギルガメッシュが甘やかしてくれる度に、何もかもが怖くなる。自分はギルガメッシュに愛される資格など無いのに、返せるものなどないのに、もっととねだってしまいそうになる。
涙を耐えるように下唇を噛めば、ギルガメッシュがため息を吐きながら、ルーラの顔を持ち上げた。
「貴様、また余計なことを考えておるな?」
「余計なことちゃうもん……おーさまからいっぱい貰いすぎて、どないしよって思っただけやもん」
「それを余計なことと言うのだたわけ。我が貴様を選び、我が貴様に与えておる。それは分かるな?」
未だに涙で滲む視界の中、合わせられたギルガメッシュの紅玉の目だけが鮮明に映る。分かるな?、と聞き分けのない子どもに言い聞かせるような声でそう問われ、思わず頷くが怖いものは怖いのだ。そんな資格などないのに与えられることに慣れ、もっととねだってしまいそうになる自分が。ギルガメッシュから与えられる全てが。
「分かっとるけど、でも…」
「でももだってもない。貴様は我の寵愛を受けるに値するのだ。大人しく我の寵愛を受けておれば良い」
顔を掴んでいたギルガメッシュの指が目もとに触れた。いつの間にか止まっていた涙の跡を辿るように、ゆっくりと目元を撫でられる。自分を見つめる目が、普段の傲岸さが滲むものではなく、宝物を愛でる時と同じ穏やかな目だということに気づいて、じくり、と胸が痛んだ。
「あんま甘やかさんといてぇ…」
「甘やかしてなどおらん。そもそも、貴様の全ては我のもの。我は我のものをしたいようにしておるだけだ」
「うぅ…」
「おい、あまり動くな。触りにくいぞ」
宝石を確かめる時と同じように、形を確かめるようにゆっくりと指が動かされる。擽ったさと恥ずかしさに体をよじれば、ギルガメッシュに注意され、結局されるがままギルガメッシュに与えられるのを受け入れてしまう。
幸せすぎて怖くて、痛くて。それでも、ギルガメッシュから与えられる優しさに、愛に、また溺れてしまうのだ。
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