上にのしかかられる感覚と首に触れられている感触。
 ゆっくりと目を開ければ、馬乗りになったルーラが
 その小さな手をギルガメッシュの首を絞めるように回している。その不可解な行動に微かに眉を潜めながら、ギルガメッシュは宝物庫の扉を開いた。

「なんのつもりだ」

 ぴたり、とルーラの首に刃が当たる。殺すつもりなどないが、それでも理由もなく看過出来るような行動ではない。
 刃の触れている部分がぷつり、と切れ、血が垂れだす。鉄錆びた匂いが鼻につく。たったあれだけの接触で切れてしまったのだ。ギルガメッシュが思うより、ルーラの体はひどく脆い。

「おーさま、」

 ようやくルーラからこぼれた声はひどく掠れていた。迷子になった子供が必死に親を呼ぶように、ギルガメッシュの名前を何度も呟く。まるで見えていないような様子で必死に名前を呼ぶ姿に、ギルガメッシュは息を吐き出すと、宝物庫の扉を閉じて目の前の小さな背中を抱き寄せた。

「どうした」

 ギルガメッシュの首に触れていた手は気づけば縋るような形で、胸元に移されている。ぐずぐずと鼻を啜りながら肩に顔を押し付けられ、寝巻きが僅かに湿った。その感触に不敬だな、と思わなくもないが、それよりも目の前でぐずるルーラを宥める方が先だ。

「お、さま、うちの事、すてんといて、」

 ひどく頼りない声で漏れた言葉は、鋭いナイフのような威力を持っていた。捨てない、と言ったところで、二つを選べないこと知っている。いっその事、殺してやる方が恩情かもしれない。
 ギルガメッシュは瞳を閉じると、ルーラの体を強く抱き寄せる。

「……………貴様が、我を飽きさせん限りは捨てん」

 捨てなどしない。手放したりするものか。それでも、いつか必ず来る終わり。その時、自らの手で終わらしてやることが、この娘にとっても、自分にとっても、最良なのだろう。


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